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言い訳
【熟女/人妻 官能小説】

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第一章 元気な男の子-1

夫が浮気をしている。証拠なんていらない。私には、それがはっきりと分かるのだ。

ラグビー部出身で押し出しの強さを買われて商社勤めをしている夫は、恋愛にも情熱的な人だった。5年前、そんな夫の猛烈なアプローチを受けて、私は夫と結婚した。結婚後も夫の情熱は覚めることなく、私が嫌がることが無ければ、夜更けまで私の体を抱き、愛の言葉を語り掛けるのが常だった。

そんな夫に変化があったのは3ヶ月ほど前だった。仕事が変ったとかで出張が増え、出張の前後は疲れていると私の体に触れることがなくなった。そして、何よりも肌を合せるとはっきりと感じる。愛撫に愛情が込められていないのだ。

夫のセックスは濃厚なものだった。私の体に火を付けて焦らし、恥ずかしい言葉を何度も言わせ、私の表情を観察し、私が我慢できなくなったところで求めさせ、いやらしい体位で乱れさせ、私を絶頂の中で溺れさせた後、溢れるほどの愛情を私の体に注ぎ込むのだ。そんな夫に、義務的に抱かれると私の心は傷ついた。

そんな時に声を掛けて来たのが健太だった。

「綾さん!」

「あら健太くん。どうしたの?」

家庭に入り子供もいない私は、レストランを始めた大学時代の同級生に誘われ、昼の時間だけホールの仕事を任せてもらっていた。健太は一ヶ月ほど前に、レストランの仕事を勉強したいと飛び込んできた熱心な大学生だった。私は彼の熱意をオーナーに伝え、土曜日の昼だけ手伝いをお願いするようにしていた。

「綾さんの元気がないので、気になって・・・」

「まあ、心配してくれたのね?嬉しいわ」

「はい。綾さんは僕の先生ですから」

「でも、次のバイトは良いの?」

「大丈夫です。今日は綾さんを元気付けたいから。てか、人手が足りて入れなかったんですよ」

「そうなの?それなら良いのかしら?二人で気晴らしに行っても?」

「そう来なくっちゃ!じゃあ、コスモワールドのジェットコースターに直行です!」

「え!ジェットコースターは、ちょっと・・・ちょ、ちょっと待って! 待ってったら!」

彼が、私の手を握って走り出す。

「大丈夫。大声出していっぱい笑ったら、元気が出ますから!」

彼に引かれて走り出す。こんなことは生まれて初めてだった。彼は底抜けに明るく元気がよかった。近くに港未来の観覧車が見える。そこまで走ろうというのだ。若い男の子に手を引かれ、ハイヒールで走っているとドラマの中にいるような気がしてきた。

「綾さん、ラッキーです。すぐに乗れそうですよ!」

近くでも数百メートルを走ったのだ。手を引かれていても、息が切れ目眩がするほどだった。彼に導かれるままに階段を登り、狭い椅子に座った。

見知らぬ誰かが頭の上から機械を降ろして私の体を締め付ける。

「やだ!これジェットコースターじゃない???」

「もちろんです。世界で一番元気が出る乗り物です!!!」

「い、いやあ! 私、絶叫系は苦手なのよ!」

「大丈夫。大丈夫。大声を出せば怖くないです!」

「どうして? どうして私、ここにいるのよ! やん。動いた! 高い! 怖い!こわいよお!」

「お腹から声を出すんです。ワー!キャー!なんでもOK!とにかく大きな声を出せば怖くないですよ!」

「やだ! や、や、や、や、いっやああああああああああああああああああああああ!」

「元気出たじゃないですか! 今のあやさん、すっごく魅力的ですよ!」

「ば、ばかあ!きゃ!きゃあああ!いやああああああああああああああああああ!」

生まれて初めて乗るジェットコースターは極めて恐ろしい乗り物だった。訳も分からずただただ叫び続けることしかできない。そして、コースターが止まるまで、一瞬たりとも生きた心地がしなかった。

「ちょっと、健くん!どういうつもりよ!死ぬとこだったじゃない!」

「あははは、あやさん。めちゃめちゃ元気出たじゃないですか!すっごいテンションでしたよ!」

彼が飛び上がって喜んでいる。

「いやあ、嬉しいなあ!やっぱり、綾さんは笑顔じゃなくちゃ!」

そんな彼を見ていると、何故か笑いが込み上げて来た。気がつけば暗かった気持ちが晴れていた。

「綾さん。今度はびっくりしない乗り物にしましょう。ほらあれ、観覧車です。
あそこでソフトクリームを買って観覧車に乗ると、もっと元気がでますよ!」

「あなたには負けるわ。でも、子供みたいじゃない?」

「子供だましでもいいじゃないですか。ほら、騙されたと思って行きましょう!」


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