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恋に変わるとき
【青春 恋愛小説】

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誠実な男?-1

キン、とジッポの蓋が閉じるとともに白い煙が舞い上がる。


ゆっくりとそれは彼の姿を包んではやがて空気に撹拌していって、香りだけを残していた。


「……何なの、俺、シメられちゃうの?」


そう言う割に、ニヤニヤしている臼井陽介。


彼はペンキが剥げかけた年季の入ったベンチにドッカリと腰をおろしたまま、あたしの顔を見上げていた。






学食で相変わらずの軽口を叩いてきたコイツの腕を引っ張って、売店脇のベンチへと移動してきたのはつい数分前のこと。


優真先輩の所謂“男の事情”について、男の意見を聞くべきだという輝美の意見の通り、あたしは不本意にもこの女ったらしに意見を請うことに決めたのだ。


本当はこんな奴とは話もしたくない。


でも、優真先輩があたしを避けているのではという不安に押しつぶされそうだったあたしは、切羽つまるあまり、藁にもすがる思いでコイツに事情を打ち明けることにした。


それほどあたしは崖っぷちに立たされていると言うのに。


そんなあたしの不安を知らないコイツが、にやけた顔を止めないのは、どうやら先ほどあたしが言った一言に原因があるらしい。


「今時『ちょっと顔貸しなさいよ』なんて、ヤンキー漫画でも言わないよね」


クククと笑いを押し殺しながら、キャップを目深にかぶり直す臼井陽介に、あたしは青筋を立てながら口を開いた。


「うるさい! あたしだって本当はあんたとなんか話したくないのよ! でもこっちにはやんごとなき事情があるの!」


「へえ、一体なんだろね」


「それは……」


言葉に詰まる。


ここまで連れてきておきながら、いざ優真先輩とのことを相談するのに躊躇いが出てきた。


普段あれだけシカトしたり、睨み付けたり、文句を言ったりしてる相手に、こちらの踏み込んだ事情を打ち明けても一笑に付されるのではないか。


いや、そもそもこんな時ばかり、男の意見が聞きたいからって利用するのは如何なものか。


なんとなくコイツに弱味を握られることに抵抗があったあたしは、そのまま黙り込んでしまった。


「もしかして、俺にクモの巣駆除でもしてもらいたくなった?」


黙り込むあたしの顔を覗き込んでは、早速セクハラ発言を始めた臼井陽介にカッとなってしまい、気付けばまた思いっきりコイツの頭に拳骨を振り落としてしまった。










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