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恋に変わるとき
【青春 恋愛小説】

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誠実な男?-2

「いってえ……。お前さ、そのすぐ手がでる悪いクセなんとかしろよ、このゴリラ女が」


臼井陽介は、涙目でキャップ越しに頭を擦った。


ゴ、ゴリラ……!


臼井陽介の暴言に、頭が噴火してしまうような勢いで、あたしは鼻息が荒くなる。


「あんたがムカつくことばっか言うからでしょうが! 人がせっかく意を決して相談しようと思ってたのに……。ヤメヤメ! あんたみたいなデリカシーのない奴に相談するのが間違ってたわ!」


あたしの怒りは沸点に達してしまい、早口でそうまくし立てると、急いで踵を返した。


カツ、とあたしの黒いブーツがリノリウムの床を鳴らした瞬間、グワッと重心が後ろに傾く。


慌てて後ろを振り向けば、あたしがバランスを崩したのは、臼井陽介があたしの手首を掴んでいたからだと気付いた。


「ちょっと、何すん……」


「相談って?」


凄みを聞かせたつもりで吐いた言葉が、臼井陽介の言葉にかき消されてしまった。


そこにあったのは、いつもの茶化したようなニヤケ顔なんかじゃなく、あたしの心の奥まで見通しそうな真っ直ぐな眼差しだった。


その顔に、不意に胸が高鳴る。さらには連動したように、掴まれた手首が熱く疼いてしまった。


な、なんでドキッとしちゃうわけ?


あたしは慌てて掴まれた手首を振りほどいて、もう片方の手で熱を持ってしまったそこを擦った。


「俺に、なんか相談したいことがあったの?」


真顔でこちらを見据えてくる彼に、いつものふざけた様子は全く見られない。


そんな彼をまっすぐ見れなかったあたしは、とうとう観念したように小さく息を吐いてから、


「……まあね」


と、申し訳なさそうに頷いた。




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