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ボーイミーツガール
【複数プレイ 官能小説】

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ボーイミーツガール-2

 ♡    ♡    ♡

「よっ、待った?」

 約束の時刻から10分遅れで待ち合わせ場所のレンタルビデオ店に現れたのは蔵人先輩だ。バイト先で知り合った、ボクに “この道” を指導してくれた親切な人だった。
 ボクが『聖カペラ女学院』の生徒に変身するための衣装一式を揃えるための手助けをしてくれたのも、女子高生メイクのやり方を懇切丁寧に教えてくれたのも、この後輩思いの素晴らしい先輩だった。少しくらいの遅刻なんて、まったく気にならない。

「いえいえ、ちっとも。先輩の方こそ、今日はムリ言っちゃって、すいません」

 いかにも『聖女』の生徒らしい上品な仕草でお辞儀をする。先輩も、熟練のシナをつくってニッコリと微笑み、それに応えてくれた。

 そう。今夜は、いよいよ『聖女』の女子寮に潜入し、ついにエリーちゃんと……。

 蔵人先輩は『聖女』の生徒の福岡ナツコって娘とつき合っていて、その娘がエリーちゃんと同学年、しかも、女子寮で同部屋のルームメイトだと知らされたときは、あまりにも奇跡的な偶然に、思わず “運命” を感じてしまったボクだった。

「ヘアスタイル…よし。メイク…よし。制服…よし。ソックス…よし。靴…よし!」

 向かい合って、上から順番に指差し点検をしていく。今回は言わば敵陣に乗り込むことになるので、念のため、脚にはニーソではなく、ブレザージャケットと同じ紺色の清楚なハイソックスに履き替えて来ていた。最後に、周りの目を気にしながらスカートを捲り上げて、下着の “装着具合” もチェックしてもらった。

「おっけ。じゃ、行こうか?」

 ボクと蔵人先輩は、連れ立ってレンタルビデオ店を後にした。もちろん、何も知らない人が端から見れば、近くに寮がある『聖カペラ女学院』の生徒が並んで談笑しながら歩いているようにしか思えなかったに違いない。

 ♡   ♡   ♡

「大丈夫。ちゃんと開いてる」

 小声で手招きする先輩に続いて『聖女』の女子寮の裏門の扉から敷地の中へ入った。門柱の隣に立つ街灯の弱々しい光を頼りにして小走りに進んで行く。
 建物に沿ってしばらく行くと先輩が立ち止まった。斜めに見上げた先には、外側に面した廊下の窓に、数センチほどの隙間が空いている。

「こっから入るから」

 隙間から手を入れて窓を半開きにすると、蔵人先輩は軽く身を翻して窓の向こう側へ姿を消した。何度も来ているだけあって手慣れたものだ。感心している場合ではなく、ボクも何とか窓枠に取り付いてよじ上り、廊下へ降り立って窓を閉め、忘れずに鍵をかけた。
 廊下の天井の明かりは消えていた。床から近い高さの壁に埋められている緑色の非常用ランプが、足下をぼんやりと照らしている。時刻は午後7時を少し回ったくらいで、門限や消灯までは随分と時間があるはずだったが、この辺りは夜になると人気が少なくなる区画だと、先輩から前もって情報を得ていたので戸惑うことはなかった。

「行くゾ」

 短く指示して、蔵人先輩は先を進む。ボクもすかさず後に続く。明かりの点いてない部屋をいくつか通り過ぎた先に階段が見えた。
 階段の手前まで進んだところで先輩が動きを止め、唇に右手の人差し指を当てながら、ボクの動きを左の手のひらで制する。小声で先輩に声をかけた。

「ココですか?」

 ああ、でも、ちょっと待て。合図があるんだ。蔵人先輩が、妙なリズムを刻んで木製の引き戸をノックする。

 テテレテ テッテレッテ テレテテー

 レって何の音だ? ヘンな疑問が浮かんだ途端に、戸の向こう側から声が聞こえた。

「どこかで呼んでる」
「震える白い胸」

 コレって合い言葉ってヤツか? 何かヘンなの。と思った瞬間にガラッと音を立てて戸が開いた。先輩の話では、恋人の福岡ナツコさんが、この部屋に木更津エリーちゃんを連れてきてくれる手筈になっているということだった。
 憧れのエリーちゃんに、また会うことが――しかも、彼女が暮らしている女子寮の中で個人的に――出来るなんて、ホント夢のようだ。ここまでしてきた苦労が今まさに報われようとしている。胸のドキドキを押さえ切れないまま、ボクは部屋の中へ入った。


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