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新・ある季節の物語
【SM 官能小説】

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(冬編)-1

…私たち、つき合い始めて、どれくらいになるかしら…

私の唇から、ふとそんな言葉が洩れる。その言葉が聞こえなかったように、イマムラは私の首
筋から乳房にかけて無言の愛撫を続ける。彼のからだが私を深く包み込んでいるというのに、
私のからだは、なぜか彼の肌を欲しがってはいなかった。


ホテルのベッドの傍にあるスタンドライトの飴色の灯りが、私の胸の上にあるイマムラの艶や
かな髪を照らしている。登りつめ、高みに果てていくには、あまりに私のからだは醒めすぎて
いた。

わずかに湿っただけの私のなかに、彼のものがゆるやかに挿入される…。

イマムラと結ばれる意味が、私の心とからだのどこにも見あたらないことを感じたとき、私は、
無意識に流れる空白の時間に深いため息をついたような気がした。彼との気だるい性の交わり
が、あの頃のような甘酸っぱい潤みに充たされることはなかった。


引き締まった肉づきをした彼の背中に手を這わす…。

私のものであって、私のものでもないもの…そう思ったとき、彼のからだの中の硬い部分に
ふれたかった。それはペニスでなくてもよかった…なにか、自分を遠い安息の果てに封じ込め
てくれるような硬さが欲しかったのだ。


イマムラと出会い、彼に愛され続けていると思っていたのは、自分のひとりよがりだったのか
もしれない。時間の流れは優しくても、その時間が、どこかとらえどころのない微睡みように
さえ思えてくる。

もし、イマムラと別れたら、私は孤独や失意、そして悲しみに胸を痛めるのだろうか…。

私は、彼とのあいだに漂う空白が消えてしまうことが恐いだけなのかもしれない。その空白を
を抱きよせていたいがためだけに、私は彼と言葉を交わし、肌を寄せ合い、ペニスの温もりを
感じ取ろうとしている…。



あの夜は、関東地方に大雪注意報が出たので、早々に店を閉めようと思っていたときだった。

私は、渋谷の道玄坂で小さなカクテルバーをやっている。ガールズバーなんて言うと聞こえは
いいが、四十歳を過ぎた女がひとりでやっている店には、顔なじみの音楽仲間が集まる程度だ。

その夜、客のいない私の店に不意に入ってきたのは、和服に身を包み、髪に白いものが交じっ
た五十歳くらいの大柄の女だった。

「そろそろ閉店になりますが…」と言いかけ、客の女の顔を見たとき、私は口をつぐんだ。

こんなときが来る日を予感していた…。微かに頬を紅潮させたその女は、当惑したような瞳を
小刻みに動かし、返事をすることもなくカウンターに腰を降ろした。



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