(冬編)-7
閉じた瞼の裏に広がるクリスマスの夜空に、音もなく雪が舞い上がる。静寂に包まれた闇を
縫うように無数の雪の粒が広がり、私の歌声が溶けるように天空に吸い込まれていく。
大好きだったクリスマス…その遠い記憶の彼方から、私に優しく微笑む何かを、私はそっと
すくい上げ、強く抱きしめる。
それは、とてもあたたかいもの… そう…とっても…あたたかいものだったのだ。
心の中をすっとよぎっていったイマムラの背中… そして、彼のなかに追い求めていた大切
なものに、私は、今になって初めて気がついたように思う。
そのとき、ゆるやかに滲み始めた瞳の奥で、今もまだ見えない何かを追い求めている自分の
残像がゆらぎ、冬の夜空に向かって、静かに翔びたとうとしていた…。
………
追伸
これで「新・ある季節の物語」は終わります。おそらく今年最後の私の小説となりますが、
これまで私の拙い作品を読んでいただいた皆様に深く感謝いたします。
読者の皆様が、素敵なクリスマスをお迎えになられることを心よりお祈りしております。
谷 舞子