拾い物-10
(ポロの飼い主か?)
しかし、いくら高値で買ったとはいえ奴隷にここまでするだろうか?
普通だったら拾ってくれたゼイン達に適当な額の金を渡して終わりのハズだ。
なのにゼイン達に向けられるこの殺気は……どう考えてもおかしい。
他に命を狙われる心当たりも無い……と思うし。
(相当、特別な奴隷なんだろうな)
これだけの可愛さだ……調教次第でいくらでも自分好みの奴隷が出来上がる。
もしくは……あまり考えたくない結果が頭を掠め、ゼインは軽く頭を振ってその思考を払った。
「カリー」
「オッケー♪」
ゼインが送った合図に、カリーは振り向きながらザザッと足を滑らせて立ち止まる。
「お嬢さんが相手かい?」
黒づくめ2人も足を止め、カリーと対峙した。
「んふ♪」
カリーは可愛く笑って見せると素早く両手を閃かせる。
「!わっ!」
タタンっと黒づくめの足元にダガーが数本刺さり、1人が驚いてたたらを踏む。
「っぶねえっ?!」
何とか避けて安堵したのもつかの間、目の前にはカリーが居た。
(いつの間に?!)
その言葉が黒づくめの口から出る前に、カリーが動く。
メキャッ
「がっ?!」
カリーの回し蹴りは黒づくめの首に綺麗にヒットして、頸椎をへし折った。
黒づくめは短いうめき声を上げて屋根の上を転がり、不快な音を立てて地面に落ちる。
「ほう……」
もう1人の黒づくめが感心したように声を漏らした。
カリーは腰の後ろに差してあった2本のトンファーを抜きつつ、黒づくめとの間合いを取る。
先程の黒づくめは新人なのか阿呆なのかは知らないが隙だらけだった。
それに比べてこっちの黒づくめには隙が無い。
だからカリーは、先にひよっこ黒づくめを排除しておいたのだ。
「お仲間さん落ちちゃったよ?」
助けなくて良いのか、とカリーは黒づくめに問いかける。
「良く言う……即死じゃないか」
黒づくめは喉を鳴らして笑いながら答えた。
「あらん♪バレてたの……ねっ!!」
カリーは言葉の途中で黒づくめとの間合いを一気に詰める。
黒づくめの頭を狙って右のトンファーを思いっきり叩きつけ……ようとしたのだが、スッとしゃがんだ黒づくめに足払いをかけられた。
カリーはもんどり打って前に倒れそうになるが、トンファーを放り投げ両手を付いてくるりと前転しそれを回避する。
すかさず後方に飛び退いたカリーは放り投げたトンファーを空中キャッチ。