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金魚とアイスクリーム
【純文学 その他小説】

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本文-15

「うゎぁ!!… 胸が……胸が………!!… ああ、わたしにはわかる。右手で握り締めたものはわたしの…わたしの………心臓!! 胸の奥にある袋が爆ぜて、血の巡りが止まるのがわかる。……苦しい、苦しくて………息ができない。握り締めた金魚の骨が、汗に混じって指の間から流れ落ちる。粉々になって。あの夢が……まさか現実に起こるなんて!!‥ しかもあの白い手、あれが、わたしの手だなんて!!……」

映像「砂垣県麕宝群に住むA子(19)の変死。死因は圧迫による心臓破裂だが、外傷がないため現在捜査中。──彼女は金魚を握り締めると仰向けにのけ反り、トイレのノブに頭部を打って倒れた。汗と共に指先から流れ出した金魚の骨片は、捜査官の調査にも関わらず検出されず。その日の晩、上空を一匹の金魚が飛行しているところをJAM旅客機の乗客一人が目撃したが、旅行疲れと思いなして報告されなかった」

「ぼくは見た。沢山のたろうの子供たちが群れをなしてぼくを取り巻いてゆくのを。色鮮やかに七色に広がるあたたかい水をひゅいひゅいと進みながら、ぼくはたろうの出迎えに涙が止まらなかった。たろう!! あの八汰海の言った通りだ。きみたちはこの翠色の湖のなかで生まれるんだね。ぼくはきみの仲間になれるだろうか。きみのように半透明な背びれを持って、ぼくはやがて生まれ変わるだろう。ああ、なんてまぶしい太陽だろう。心まで朱色に染まってしまう、染まってしまうよ……」

映像「飛び下り自殺者の死体が昨日の17時半ば頃、発見された。頭部、胸部共に、近くの岩に当たり粉砕され、身元の確認は不可能。発見した釣人の話では、死体は夕日が湖に差し掛かり、空が茜色に染まる頃、急に『ポコリ』と音を立てて水底から浮上した模様……」

「わたしは金魚と金切り声をあげた…… 」

<了>


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