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金魚とアイスクリーム
【純文学 その他小説】

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本文-14

「(金魚の骨?)
 なぜだか急に、たろうの骨だけになった姿が脳裏を掠めた。いや、あれは本当にたろうの骨なのだろうか。
 (たろう……)
 もしもたろうの骨があるのなら、ぼくはこの手で彼を埋葬してやりたい。あたたかい土でやわらかく包んで、まるでぼくの一部を葬り去るように、厳粛に、彼の弔いを行いたい。彼とは、切り離せないぼくの一部、ぼくのつくりだした幻想。そして彼の傍らには、殉死したぼくの躰を供えよう。彼の魂がぼくの躰に残る生気を吸って永遠に生き長らえるように。
 ぼくは静かに深呼吸して、全身の衣服を脱いだ。両目を閉じ、右手をちょうど心臓の上にのせて、想いをたろうの亡骸に集中させる。そして───」

「(金魚の骨?)
 きっとそうだ。だって形がお腹の丸いらんちうにそっくりだし、大きさだって金魚と見ればちょうどいい。でも、何て見事な白骨だろう。風化して葉肉の落ちた葉っぱのように、掌に乗せて丹念に眺めた。細い小骨、最新カメラの部品なんか比較にならないほど緻密で繊細な、壊れやすい機械のようだ。驚くほどの軽さ。
 しばらく見つめていると、疲れてくる。興味津々で眺めていた金魚の亡骸にも嫌気が差して、細い躰を握り潰したらどんな感触だろうという、別種の衝動を抑え切れなくなる。幾多の小骨が小気味良い音を立てながらカリカリと崩れてゆくのだろうと思うと、わたしはもう我慢ができなくなり……っ!!…」

映像「苗唔山の山間で、昭和初期に建てられた丸木橋の敷居を跨ぐ男の姿がある。彼は全裸姿で八汰海の前に立ち、両手を揃えて身を乗り出すと、水泳選手のような見事な弧を描いて落下した。偶然近隣を飛行していたヘリコプター操縦士の話によると、絹糸のような橋から黒い点がゆっくりと落ちていったのが確認されている。また住民の話によると、昨夜18時45分ごろ、何かが爆ぜるような音が聞こえた、という」


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