約束-9
真雪が階段下のキッチンスペースから二つのスープ皿をトレイに載せてテーブルに運んで来た。
「ミルクたっぷりのジャガイモのポタージュスープだよ。」
「ありがとう。今日の料理、全部真雪の手作りなんでしょ?」
「うん。味は保証しないけどね。」
「愛がこもっている料理にまずいものはないよ。」
「調子のいいこと言っちゃって。」真雪は龍の額を小突いた。
「乾杯しよう。」
「そうだね。」真雪は二つのグラスにジンジャーエールを注いだ。「パイナップルジュースもあるけど。それとも牛乳がいい?」
「あ、いいね。後でどっちもいただくよ。」
「乾杯!」二つのグラスが合わされた。「メリークリスマス!」
「何だか、とってもあったかい。いつもに増して、真雪といられることが、とっても心地いい。」
「あたしも。龍とこの世で出会えたことが、最高に素敵なことに思える。」
「安物のプレゼントだけど、欲しい?」龍がバッグからごそごそと包みを取り出しながら言った。「欲しくない、って言ってもあげるけどさ。」
「言わないよ、欲しくないなんて。」真雪が笑った。
「こないだ言ってたよね、ネックレスが欲しいって。」
「わあ!覚えててくれたんだ、龍。」
「つい二三日前のことでしょ。あれって、今日のプレゼントのリクエストだったんじゃないの?」
「そのつもりもちょっとあった。」真雪は頭を掻いた。
「ほんとに安物だよ、期待しないでね。」
「龍のくれる物は何でも宝物だよ。」
「調子のいいこと言っちゃって。」今度は龍が真雪の額を小突いた。
それは二本の銀の細い鎖だった。「俺と真雪、おそろいだ。」
「よしっ!」真雪は叫んだ。
「なんだよ、『よし』って。」龍はあからさまに怪訝な顔をした。
真雪は暖炉の上のクリスマスツリーの横に置いてあった箱を手に取り、龍に手渡した。「開けてみて。」
「う、うん。」龍はその包みを開け、現れた木の箱の蓋を取った。
「こ、これは!」ケイロンの弓そして矢のペンダントトップだった。「きれい!すごい!これもおそろいだ。」
「つけてみようよ、今。」真雪が焦った様子で言った。「龍の買ってくれた鎖につけて。」
龍がケイロンの弓、真雪が矢の方のペンダントを首につけ合った。
「いい感じ。」龍が言った。
「素敵っ!」真雪も言った。
「うちのママと、あなたのお父さんが恋人同士だった頃、そのペンダントを買ったんだって。」
「そうなんだ。」
二人は暖炉の火を見ながら並んで膝を抱えて座っていた。
「二つを重ね合わせると、射手座の星の並びができるんだよ。」
「ほんとに?すごいね。よくできてる。」
「ケンジおじ、すっごくロマンチック。龍がその血を受け継いでくれてて良かった。」
龍は頭を掻いた。
「外出してイブを過ごしたかっただろ?真雪も。」
「いいの。あたしとにかく龍といたい。いっぱい話したい。それに、」真雪は龍の顔を見た。「ここだったら人目を気にせず抱いてもらえるし、キスもできるじゃん。」
「そうだね。」龍は笑った。「何だか、暑くない?」
「うん。あたしもそう思ってた。」真雪は着ていたニットのセーターを脱ぎ始めた。
龍もトレーナーを脱いだ。それから二人はどんどん着衣を脱ぎ始めた。あっという間に二人とも下着だけの姿になった。