種付け師誕生-2
わしらのこういう会話にも通行人達は全く無関心に通りすぎて行く。
都会人ってのは余程忙しい生き物なんだと思う。
わしは歩道の花壇の縁に腰掛けると、娘っ子に膝に乗るように言った。
「立つかどうかわしの膝に座ればすぐわかる」
そう言うと人通りの多いところだったが、娘っ子を膝の上に座らせた。
娘っ子の大きな尻が触れると、たちまちわしの一物はむくむくと大きくなった。
娘っ子は尻をもじもじさせて言った。
「あっ、本当だ。固くなってる。信じられねえ」
「何が信じられねえだ。誰だってこうなるだろう。
あんたみたいな若い娘っ子の尻が乗っかれば、突っ込みたくなっておっ立つもんだろうが」
わしがそう言うと、娘っ子は横座りに座り直してわしの顔をまじまじと見た。
「爺イ、どんな田舎から出てきたんだよ。
都会じゃ今どきチンポが立つ爺さんなんていないんだよ。
若い男でも3人に2人はインポなんだから。
使えても種が薄くって、殆どは種無し西瓜なんだよ」
わしはこの娘っ子が一体何を言ってるのか始めは分からなかった。
だが説明を聞くとようやく事情が飲み込めて来た。
ここ何十年間の間に、男たちにインポや無精子病が増えて来て、セックスすら出来なくなって来ているのだという。
娘っ子の父親も兄もその病気になって、今じゃ立つこともできないという。
原因ははっきりしないが都市部に一斉に流行して、病気にかからなかった者は希少価値だというのだ。
それ故そういう者は厳正に審査されて精子が健康でセックス可能だと判断されると、国家資格を与えられるのだという。
「なんの国家資格だ。それは?」
「受精補助師だよ。いわゆる種付け師とか種人(たねびと)とか言われてるんだ」
まるで『尋ね人』とか『旅人』みたいな発音だなと思ったよ。
「そんな資格持って、一体誰に種付けするんだ?」
「それも国家資格が必要なんだよ。遺伝子が優秀で、なおかつ試験に合格しないと種付けして貰えないんだ。
受精資格者って言うんだ。
今どきそんな資格を持っているのはよっぽど家柄の良いお嬢様とか、大金持ちのご令嬢とか、大臣とか有名人の子女くらいのもんだよ。それか天才的な才能の持ち主だね。
スポーツとか学問研究とか芸術面での業績がないと駄目なんだ。
もち、あたしにはそんな資格ないから子孫はもてないのさ。
あと……種付けが許可されるのはお互いの遺伝情報を照らし合わせてなんとかかんとかって言ってたな。
お互いの遺伝子に共通なものが多いとできる子孫は弱いらしんだ。
だから検査を通らないと種付けはできないんだ」
「そんな七面倒なことする為に国家資格取る必要があるのかい?」
「あるよ。だって、資格を持っていれば国から補助金を貰えるから生活に困らないんだ。それに赤ちゃんを産めば親子ともども手厚く保護されるって。」
わしは娘っ子に言った。
「じゃあ、あんた。わしがあんたに種付けしてやっか?」
「ええっ!? って、本当に良いのかい? 闇で種付けしてくれんの?
だって、あたし爺イにお金払えないよ」
「そんなのもん、いるか。ところであんた、あれやったことあんのか」
「あれってHのことかい? ある訳ないよ。大体チンチンおっ立った男に出くわしたことないもん。」
「じゃあ、まだおぼこだな。中に突っ込まれたことないなら、あそこがまだ狭いだろう」
「そんなことないよ。張り形使って自分で突っ込んでるから」
「ええっ、なんでそんなことしてんだ?」
「だって、いざチャンスが来たとき、そこが通りづらかったら困るじゃないか。
だから張り形は清潔な物を都で支給してくれるんだよ。
あたしのは初心者用だからサイズは1号だけどお母さんは3号を使っているよ。
お父さんが元気なときは2号くらいだったって言ってたから、さらにサイズアップさせてんだけどさ」
「訳のわからない話だな。まあいい。ところでどこでやればいいんだ?
わしのアパートでやるか?」
「爺イ、馬鹿だな。小学生でもわかってること知らないとはね。
爺イの家でやったらたちまち周りにわかってしまって、そこに住めないことになるじゃないか」
わしは膝の上の娘っ子のくびれた腰を見ながら言った。
「言ってる意味がわからないんだが」