ダブルクロス〜Original Characters-3
俺は山吹学園という場所に初めて訪れた。制服は潤菜のをほぼ毎日見てるけどな。ここは今まで見て来た学校の中でも、割と綺麗な校舎だと思う。
「亮子〜どこにいるの?」
「潤菜…」
「あ、亮子…え?」
バシュッ…
「う゛っ…」
「潤菜?」
潤菜が変な声を出したから、俺は彼女の方を見た。その瞬間、彼女は地面に倒れた。
「なっ?!潤菜!しっかりしろ!」
潤菜の腹から血が溢れてきている。まるで何かに射ぬかれたように。
「り、亮子…何…で…?………」
彼女の身体から力が一気に抜け、それ以降、潤菜が喋ることは無かった。
「潤菜…」
バシュッ バシュッ バシュッ バシュッ…
今度は俺に対して、しかも何発もの光が俺の体を貫いた。光が貫いた場所からは血が流れてきている。
「くっ…!」
倒れる俺に対して、目の前に数人の人影が見える。
「あーあ、龍斗君が来なければ、潤菜を捕まえとくだけにしようと思ってたのに…でも、もう用済みね」
「…亮子さん?」
そう、その中の一人は潤菜の友達であるはずの亮子だった。俺も前に一度会ったことがあるから間違い無い。
「まさか…FHか?」
「そう。私は『ソラリス』と『エンジェルハイロウ』のクロスブリードのオーヴァードよ。ちなみに他のメンバーは『エンジェルハイロウ』のピュアブリードよ」
「光部隊か…ソラリスのエフェクトが使えるってことは、こいつが友達になるように催眠を掛けてやがったな?」
「いいえ、学校全体に掛けたわ。私がこの学校の生徒という暗示をね」
「ほう…で?俺を殺すのか…?」
「…もちろんよ…やってしまいなさい」
亮子に命じられた黒服達が放った光が、俺の体を貫いていく。普通ならここで死ぬはずだ。
「けど…俺だって……俺だってオーヴァードなんだ!」
ブチブチッという音が体内中から聞こえる。身体がレゲネイドウイルスに侵食されているのだ。正直この音は嫌いだけど、今は俺の怒りにも聞こえる。
傷口から泡が溢れ出し、傷口を塞いでいく。レゲネイドが身体の危機を察知し、回復させたのだ。さらにウイルスに侵食されきった俺は、オーヴァードとしての能力をフルに発動することができる。
「さて、いくか…完全獣化!」
これは『キュマイラ』というシンドロームのエフェクトで、このシンドロームは獣の力を得るものだ。俺はみるみる人間の姿から離れ、獣の姿へと変身した。
「さて…誰から死にたい?」
敵は亮子を含めて五人。亮子以外は黒服の男達だった。
「死ぬのはお前だ!」
黒服の一人が光で剣を作りだし、俺に斬りかかってきた。
「遅いな」
俺は『ハヌマーン』という、高速技を可能とするシンドロームも得ている。見切ることも可能だ。
「先ずはあんただな」
右手に力を込める。そして有りったけの力とスピードで、黒服をぶん殴った。ぐしゃって音と同時に、そいつは地面に叩き付けられて動かなくなった。
「うっ…全員下がりなさい!離れて射撃中心で戦うのよ!ガーゴイル、あなたは私達に近づけない!」
亮子の指示で、残りの奴ら全員が俺から離れた。亮子は黒服達のさらに後ろにいる。
「…意味が無いのに」
俺は奴らに急接近しようとした。しかし。
「あれ?」
どうしたものか、俺はその場から前に進むことができない。
「ちっ、やられたか!」
ソラリスを持つ奴は人を操るのが得意だ。さっき俺は亮子の『近づけない』という言葉のせいで、奴らに近づけないのだろう。
「うわーかなり迷惑だな…お返ししなくちゃな」
黒服三人は纏まっている。恰好の的だ。
先ずは右手を『かぎ爪』へと変化させ、力を込める。そのかぎ爪は超震動を起こしている。
「行くぜ!」
俺は腕を伸ばした。黒服の奴らに届くぐらいに。かぎ爪は黒服の一人をあっさりと貫き、そして戻ってくる。他の二人にも同じことを繰り返した。まぁそれはハヌマーンのエフェクトを使ったから、一瞬で終わったけどな。
黒服達は、ほぼ同時に倒れた。これで生き残っているのは、俺と亮子だけだ!
「ちょっと…あなた何なのよ!常識ってものが通用してないわよ!」
亮子は喚いている。けど、常識って言われてもなぁ。
「あなた今身体伸ばしたわよね?何で『エグザイル』のエフェクトが使えるのよ!」
エグザイル…自分の身体を伸ばしたり曲げたり、自由にできるシンドロームだ。
「普通多くて二つなのに、何で三つ目のシンドロームなんか…」
「…教えないよ、潤菜を殺した罰としてね」
あの世で誰かに聞いてくれよ。