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ダブルクロス〜Original Characters
【二次創作 その他小説】

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ダブルクロス〜Original Characters-2

 俺の名は桐島龍斗。レゲネイドウイルスに感染した『オーヴァード』だ。昔は『FH(ファルツハーツ)』というテロ組織で訓練・活動を続けていたが、俺自身のことでやるせなくなり、脱退…正確に言えば、脱走したんだ。ちなみに当時のコードネームは『ガーゴイル』だ。
 今はFHと、FHが敵対している組織、『UGN(ユニバーサルガーディアンズネットワーク)』から追われている身だ。
 いや、UGNの方は俺を監視はしているが、攻撃を仕掛けてはこないからまだいい。
 逆にFHは俺の命を狙ってきやがる。周りの人間まで巻き込んでさ。まぁ毎回返り討ちにしてるんだけどな。


「龍斗、何してんの?」「あ、別に…。ちょっと考え事してただけだ」
 俺に声を掛けてきたこの女は武蔵野潤菜。山吹学園高校の一年生だ。ちなみに俺はまだ16才なんで、こいつとは同い年なんだ。
 こいつの家は『武蔵庵』という蕎麦屋を経営している。この蕎麦がまた旨いんだよ。うどんもあるぜ…って、何で店の紹介してるかって言うと、実は俺、そこで店員として働き、武蔵野家に居候しているのだ。
 当時身元を明かすことが出来なかった俺を、ここのご主人、康弘さんは快く俺を居候として認めてくれた。潤菜は同じ年頃の男である俺に不安を持っていたが、しばらくするとかなり仲良くなれた。


「早いとこ店内片付けようよ」
「そうだな」
 俺と潤菜は店内の掃除を始めた。
「そういえばさぁ、亮子が龍斗を紹介してってまた言ってきたんだけど」
「またかよ。懲りないねぇ、彼女も」
 ちなみに亮子というのは潤菜の友達で、以前店に来た時に俺に惚れたらしい。それ以来、何度も俺を紹介してくれと頼んでくるのだ。
「俺は彼女作らない主義なのに」
 もちろんこれは嘘だ。俺はオーヴァードだから、一般人と付き合うわけにはいかない。それだけの話だ。
「だよね〜。こんな傍に居る私だって目に入れてくれないんだし?」
 …いや、実際潤菜は俺好みでかなり可愛い。何て言うか…雰囲気とかがさ。俺がオーヴァードじゃなかったら即行告白してるだろうな。
「いやいや、潤菜にはもっと頼もしい男が現れるよ」
 そうでなければ、俺が困る。潤菜が他人のものになれば、俺は潤菜に対する想いを打ち消せる。
「もう…けど、何か有ったら絶対護ってよね?」
「分かってるよ。何か有ったらな」
 何も無いことを祈るけど、何か有ったら命懸けで潤菜を…いや、この日常を護ってやるんだ!


 そんなある日のこと。お昼時ということもあり、店内は混んでいた。
「伍番に天ざる蕎麦とせいろうどん」
「あいよ!」
 客の注文を厨房に伝えて、俺はホールを見回した。丁度その時、一人の男性客がこっちを見て俺を呼んだ。
「ご注文はお決まりですか?」
 俺が営業スマイルでそう尋ねたその瞬間だ。辺りがモノトーンとなり、何一つとして動かなくなった。動いているのは俺と男性客だけ…。
「やはりオーヴァードでしたか…」
「…『ワーディング』張った状態で動けてんだ。お前もそうなんだろ?」
 ワーディングってのは簡単に言えば結界で、そん中ではオーヴァード以外の動きが無効化される。
「察しの通り。私はUGNの者です。本日はこれを届けに」
 男は一枚の封筒を俺に手渡した。
「俺はUGNとも関わる気は無い」
「今はそうでも、手紙はちゃんと読んで下さいね?話はそれからですから」
 男はうっすらと笑みを浮かべた。
「さて…。それにしても、君がここで働いていてくれて嬉しいよ」
「は?」
 俺は一瞬、その男の考えが判らず身構えてしまった。
「だって、ここの料理の代金を『経費としておとせる』んだから…」
 その瞬間、男はワーディングを解いてこう言った。
「天ぷら盛り合わせと掛け蕎麦大盛り、急いで頼むよ」


 閉店後に俺は男から貰った手紙を読んだ。それにはこう書かれていた。

《FHの部隊が君を狙ってこの町に潜入している。今回FH掃討に当たり、UGNに力を貸して欲しい。そうしてくれれば、我々はこれからの君をバックアップしていくと約束しよう》

「…どっちもウゼーなぁ…」
 バックアップしてくれるのは嬉しいが、正直UGNに入ろうとは思えない。過去とはいえ、敵対していた組織だからだろうか?いや、それでもFHの方が厄介だ。何度も引っ越して、やっと見つけた安息の地を…。
「ねぇ、龍斗」
「っ?!」
「ど、どうしたの?」
「…潤菜、いきなり後ろから声を掛けないでくれよ…」
 流石に驚くって。
「それよりさ、亮子から学校まで来てってメール有ったんだけど、一緒に来てくれない?もうかなり遅いし」
「あぁ、構わないよ。あーでも相手が亮子さんか…厳しいな…」
 たまに彼女に会うと、俺のこと好き好きオーラが出てるんだよなぁ…。厄介だ。
「ははっ、同感」
 俺も潤菜も苦笑いを浮かべている。これが今日、最後の笑顔とも知らずに…。


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