王様じゃんけん-6
「わ、私は…………」
必死で思いの丈を紡ごうとするも、上手く言葉に出来ない私。
こんな優柔不断な私を好きだと言ってくれる二人を目の前に、
どちらか片方を選ぶなんて事、どんなに頑張っても私には出来そうもない。
「夏樹はさ………… どちらを選ぼうか迷っているだろ?」
「…………え?」
「はぁ…… この期に及んで姉様はまだそんな事で悩んでいるですか?」
「…………え? …………えぇ?」
二人の言葉に慌てる私。
だって今、私が問われているのは紛れもなく『選択』であって、
それはすなわちユイか隆かを選ぶ事なのではないのだろうか?
「だいたいさぁ…… 俺は男でユイは女、そもそも性が違うんだから比べようがないよな?」
「そうですよ…… 姉様は頭がいいのにどこか抜けちゃってるんです」
「ちょ…… な、何を言ってるの? だってあなたたち今………… 私にどうしたいかって…………」
「『どうしたい』かと『どっちにする』は違うだろ?」
「つまり姉様はいつも『どっちにする』ばかり考えているのですよ……」
「そ、そんな…… 言ってる意味はわかるけれど『どうしたい』なんてただの私の願望じゃない?」
私は身を乗り出してふたりに尋ねた。
私の願望など決まっている。
でもそんなのはただのわがままに過ぎず、
そんな不条理は通らないからこそ、どちらかを選択せざる得ないのではないか…………
「んで? その夏樹の願望は何よ?」
「そうです…… とりあえず言ってみるですよ」
「と、とりあえず言えって言われても………… そんなの決まってるわけで……」
私はもごもごと言葉を濁した。
だって言っていいわけなど無い。
どちらも私の側にいて、どちらも私の事を愛していて欲しいだなんて……
「ったく…… 俺はまた女に女を取られるかと思ってびっくりしたよ…………」
「あは、以前は姉様に私を取られ、今回は私に姉様を取られるなんて…… 隆はホント不憫ですね」
「おいっ! 不憫だなんて言うなっ 俺が可哀相だろっ!」
何故だろう? 私の考えはまだ言葉にしていない筈なのに、
二人してもう話は終わったかのように無邪気にはしゃいでいる。
「ちょ…… 待ってよ? 私はまだ何もっ………… んっ…………」
その言葉を遮るように、突然隆が私の唇を奪った。
太い両腕できつく抱きしめながら、
まるで私の隙間をすべて塞いでいくように……
「あっ! 隆ばかりずるいです! 私も姉様とキスしたい!!!」
そう言ってユイは隆を跳ね除けると、
私をベッドに押し倒しながら、
激しく唇を重ねては、その小さな手で体中を貪りはじめた。
「ちょ…… こ、こらっ あなたたちっ………… あっ………… やぁっ……」