王様じゃんけん-4
「はぁ…… 夏樹が大変って………… はぁ…… どういう………… はぁはぁ…………」
汗だくの隆が、息絶え絶えにユイへと問いかける。
「まぁまぁ…… 落ち着くですよ隆」
「落ち付けって言われても………… はぁ…… いったい何が…………」
テーブルのお茶をグイッと飲み干しては、
ユイと私の顔を交互に見る隆。
首筋には滝のように流れる大量の汗が見て取れる。
それはついさっきまで私たちがかいていた淫らな汗とは質が違う、
心配のあまり着の身着のまま家から走って来たであろう汗。
その汗を見て私は申し訳なさでいっぱいになり、
思わず言葉を失ったまま俯いてしまっていた。
「隆………… 隆は姉様の事が好きですか?」
「な、なんだよ急に?」
ユイの言葉に動揺する隆。
もちろんそれは私も同じで、ユイが何を言い出そうとしているのか皆目見当がつかず、
激しい動悸に胸を抑えたまま、ただ不安でいっぱいになっていた。
「私は姉様の事が好きですよ? そうですね…… 隆の前でこんな事が出来るくらいに…………」
そう言うやユイは突然、私の目の前に立ちふさがるや、
にっこりと微笑みながら、そっとその唇を私へと重ねてきた。
「んっ…… ゆ、ユイっ………… んんっ…………」
啄むようなキスをしたかと思うと、唇を割っては舌をねじ込み、
激しく私の舌を絡め取りはじめるユイ。
私は少なからず抵抗を示すも、その動きにどこか翻弄されてしまっては、
気がつけば思わずいつものように、目を閉じそれを受け入れてしまっていた。
「ちょ………… ど、どういう事なんだよ?」
目のやり場に困りながらも、
どういう事か理解出来ない様子の隆が口を挟む。
ユイは目を開け、そっと私から唇を外すと、
垂れ下がった膵液を指で手繰り寄せながら、じっと隆を見つめていた。
「どういうも何も…… こういう事なのです」
「こういうって…… つまり夏樹とユイは…………」
「ま、待って! 違うの隆っ!!! 私はっ…………」
「姉様は少し黙っているです!」
ユイの言葉に身体を震わせては、思わず口を閉ざす私。
私を好きだと言いながら、私と隆を応援しながらも、
自らこんな状況を招くユイの考えが私にはわからない。
「いいですか隆? 感情的にならずゆっくり最後まで話を聞くですよ?」
「はぁ…… この状況じゃ聞かざる他ないよ…………」
そう言って隆はその場にあぐらをかくと、
深い溜息をつきながらも、黙ってユイの話に耳を傾けた。