臆病風に吹かれて-2
「だってさ、オレと一緒にいるのに他の男の話ばっか」
優真先輩がイタズラっぽく笑うのに対し、あたしは罪悪感が込み上げてくる。
確かに悪口とは言え、他の男の話なんてしてたら面白くないよね。
「……ごめんなさい」
あたしは手に持っていたペットボトルを目の前のガラステーブルにトンと置いてから、目を伏せた。
すると、優真先輩は慌てたようにあたしの頭をグシャグシャ撫で付けた。
「いや、そんな気にしないで」
「でも、確かに無神経でした。もうあんな男の話なんてやめますから」
あたしがそう言うと、優真先輩は頭を撫でていた手をするりと滑らせ首の辺りに下ろす。
思いの外冷たい手に、あたしの身体はビクンと小さく跳ねた。
目の前にある、黒いセルフレームの眼鏡。
その奥に覗く、奥二重の切れ長の綺麗な瞳。
眼鏡を掛けているから、地味な印象の強い優真先輩だけど、実は結構カッコいいんだ。
髪型だって無頓着なただの短いヘアスタイルだし、服装だってよく言えばシンプル、悪く言えば地味だけど、磨けば光るダイヤモンドの原石だと思う。
でも、原石のままでいて欲しいのは、あたしの勝手な願い。
優真先輩の魅力を知っているのはあたしだけでいい。
そんなことを思いながら、あたしは優真先輩と視線を絡ませる。
次の瞬間、あたし達は唇が重なった。
最初は軽くついばむだけの優しいキスが繰り返される。
「……ん……」
優真先輩の唇の温かさ、柔らかさにウットリするあまり、思わず吐息が漏れる。
それと同時にもう片方の優真先輩の手があたしの肩を優しく撫でた。
少しずつ大胆になっていくキス。
優真先輩の舌がゆっくりとあたしの口の中に入っていくと、あたしの心臓はバクバクと早鐘を打ったように脈を打ち始めた。
最近の優真先輩のキスの仕方は、激しくあたしを求めているっていうのがすごく伝わってくる。
あたしの舌を逃すまいと執拗に追いかけ、捕らえてはねっとりと彼のそれと絡ませて、舌先でチロチロとあたしの歯の裏をなぞり。
男の人ってこんなわずかな期間でキスが上手になるもんなのかと、驚くほどだった。