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やさぐれ娘は屋上で笑う
【学園物 恋愛小説】

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#04  研修旅行――三日目-1

「だぁかぁらぁ〜っ!なっんで、私がオマエと同じ班になんなきゃいけねえんだっつぅーの!」



私、こと佐倉萌は近くに生えていた百日紅の幹を蹴った。

このツルツル美肌の樹木に何の罪もない事は議論の余地はないだろう。あまりよろしくない態度だとは重々承知のうえである。

――けど、それほどムカついているということだ。

世間的に『ヤンキー』のレッテルを貼られた私の暴挙に、クラスメイトの約半分ほど――残りの半分は別行動なのである――が、戦々恐々としていた。

ほぼ全員である。ただひとりを除いたら、だが。



「仕方ないじゃないですか。佐倉さん、組み分けの時にいなかったんですから。ほら、行きますよ?工芸だってやってみれば面白いかもしれないじゃないですか」



まるで我が侭な子供を諌める母親のごとき口調に、私は色白のモッサイ委員長こと林田尊を睨んだ。

――いや、私が嫌なのはオマエと同じ組みであることで、勝手に研修選択を工芸教室に組み分けされたことじゃねえから。

そんな本心を吐露したとしたら、ここ数日で(限りなく悪い意味で)溝の埋まったこの生真面目プッツン女がどれほどの猛抗議を披露してくるかは想像に難くなかったために「ぐぅ……」と一唸り、私はそれでも一応、文句を吐き出した。



「だぁああっ!ったくよお!なにが悲しくて、高校生の研修旅行で鳥籠なんて作んなきゃいけねえんだっ?鎌倉くんだりに来てまでさ!イマドキ、小学生だってプウたれんだろ!」

「学校が決めたことですからね。それともお蕎麦作りのほうがよかったですか?」

「ヤだよ!そもそも、そういう問題じゃあねえし――ってかな、岐島と同じ組みにでもされてみろ!どうなるっ?」



林田が、はた、と固まった。

遠くに浮かぶ入道雲へと、その険しげな眼窩を向ける。

う〜ん、と顎に右手を置き、



「…………私が食べる分、残りますかね?」



そして、結論を口にした。――私が考えたのと同じ、な。

疑問符がついたのは、こいつなりの優しさかなんかだと思っておこう。

ともあれ、あのハラペコ奇人と食事関連で係わり合いになりたくはない、という共通認識ができたことだけでも、今回の研修旅行はためになったはずだ。




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