#04 研修旅行――三日目-5
「………………はあ」
ただ、ここで怒っても何にもならない上に、まったく意味もない。労力の無駄だ。
だから、結局、私が退いて終わりにするのが一番楽チンな解決法なのである。
私は懇々と怨みの眼差しを送りつつも、それ以上は食い下がらなかった。
それに、
「確かに、な……」
こいつの言ったことにも一理ないこともなくはなくなくなかったし。
すると、岐島が首を傾げてくる。
「なに?」
「ちっ、聞こえやがったか」
「なんだい?聞かせるつもりの呟きだと思ったんだけども」
「……まあ、そうなんだけどもよ、半分はさ。いや、あれだ、んま、つまらなくはなかったかな――って思っただけだ」
「……?なにがだい?」
「こんのっ!てめぇが言い出したん――って…………」
岐島の言いように苛立った私はその無愛想ヅラを睨みつけたのだが、その顔にゴキゲンな成分を見出し、絶句した。
どうやら、からかわれたようだ。
ホント、いい性格をしたやつである。大概にしろ、このヤロ?
……けど、今度は怒る気にもならなかった。
ここまで思考を把握されると、ソレはそれで嫌ではないモノなのである。自分でも意外であるのだが。
きっと、家族も含めて、ここまでグイグイと私の中まで踏み込んできたヤツというのは今までいなかったからだろう。
信頼とかシンパシーとかそういったのとは違う、よくわからないが、安心感みたいのを抱いてしまったのである。
――不覚だ。
「なんだ?お前はアレか?な〜んでもお見通しってわけか?あん?」
なもんで、こういった悪態が自然と口をついて出てくる。
つっても、岐島はそう言うに至った私の心情も大まかには捉えているのだろう、瓢々と頷いてきやがった。