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やさぐれ娘は屋上で笑う
【学園物 恋愛小説】

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#04  研修旅行――三日目-4

あと二つは、その林田のヤツと酷似したものをこの旅行の解散まで、クラスの衆目の中、抱えなければならない屈辱――さすがにカバンに入らなかったのだ――と、その私にとっては豚真珠でしかない逸品の製作段階で、延々とこの完璧主義女の細かい指摘に晒されたことである。

身体が疲れ、気まで疲れ、その上、ペアルックまがいの羞恥の中、つっまらねー講釈聞かされることが最悪じゃないとは、たとえ神でも言わせはしない。



「…………はあ、サイアク」

「ふっ」

「っ?」



私が、今日だけでも何度目だろう、溜め息をついたときだ、妙な息遣いが聞こえた。

岐島の方からだ。私が見上げてみると、岐島は、



「……なにが可笑しいだよ?」



笑っていた。

唇の端をそっと持ち上げ、堪えるように、けれども笑顔以外には捕らえない用のない表情をこの能面男はしているのである。

面食らいながらも、所以のわからない含み笑いを追及する私。

すると、岐島はいつもの無表情に戻ると、それでも肩眉をあげるというゴキゲンな仕草をしてきた。



「そんなに睨まないでくれ。他意はないさ。ただ――ね」

「ただ、なんだよ?随分と遠回しじゃねえか、らしくもねえ」

「いや、なに。楽しそうで何よりなだな、とさ」

「なっ――」



私は絶句した。

楽しそうッ?この、私が?こんなほんわかヌルヌルのクラスメイトとの――しかも、そんなに仲のよくない連中とのコミュニケーションで楽しそうだとっ?

…………い、いや、ないだろ、それは。目、腐ってんじゃねえの?



「腐ってないよ」

「んんッ?」

「うん?」

「〜〜のっ、岐島っ!あのなあ、その、他人の考えてることに当てずっぽうで返事するのやめろ!当たってるとビックリするから、マジで!」

「……?」



私はドキドキする胸の辺りを押さえつつ、ノッペリ野郎を睨んだ。

いや、ほんと、心臓に悪いんだ、こいつのコレ。思考が知らず知らずのうちに口から漏れちまっていたのかと、心配になったもんだ、最初の頃はさ。

けれど、もうそんな心配はしない。この男が異常なだけで、私に非はない。なにも、全然、断じてだ。

……ちょっと癪であるのは確かだが。

だが、そんなこっちの心情なんかは一切汲み取ってなんかはくれない岐島は、どうしてそこまで批難されているかがわからないのだ、首を傾げやがっていた。

これまた腹立つ反応である。




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