The end of the DragonRaja, Chapter 2[The start in new life]-28
ジャイファンに帰還した4人は緊急報告のため城へと赴いていた。
だがもちろん既に日付は変わり夜闇は深い。
緊急ということで城内警備の王国騎士団の者にマルトースを呼びに行かせたが、
少々時間がかかる。
「なぁアラン、マルトースさんにどう報告するんだよ?」
ただアランには答えることはまだ出来ない。
それだけのことが一緒くたに脳へ運び込まれ、それらは未だ整頓されていない。
そんなアランを気遣いリトが代弁した。
「…どうって言っても、正直に話すしかないでしょ。
聞いた話がほんとかうそかはわからないけどさ、あのシーフが死んだ事だけは事実だし。」
「ま、そうだけど。
とりあえず夜も更けてるし、シーフの事だけ話して詳しい話は明日にしようぜ。
俺も疲れた…、色々…。」
口を閉ざしたままのアランを見て、
やはり自分の知らないところに事実があるのかもしれない、そう考えていた。
リーフはずっとアランに肩を貸している。
彼女の顔には不安などなく、しっかりと彼を支えていた。
事実の真偽は確かに納得できない部分があるが、
それでも彼女自身の気持ちは紛れもないものである。
アランとの想いを繋ぎ留めるには、事実の真偽など最早あまり重要なことではなかった。
今自分の隣に愛すべきアランがいる、それだけで良かった。
幾度も離され転ぶことも長い道中であったが、
幼い頃からずっと追いかけ続けた背中を手放す理由は何もない。
マルトースが現れる。
あのシーフ討伐に救援として昼間遣わした彼等だが、
今彼自身の目の前に4人がいることで2つの結果が瞬時に想定された。
「夜分遅くに申し訳御座いません。」
「構わん。報告に上がってくれて済まないが、これだけ聞きたい。
あのシーフは現れなかったのか、それとも…倒せたのか。」
アランは思い悩んだ。
結果だけは単純明快ではあるが、その先のことを言葉にするのは困難である。
「はい、あのシーフは死にました。」
マルトースは怪訝な顔をした。
アランが、倒せた、という言葉ではなく、
死んだ、という言葉を用いたことで何かあったのだろうと彼は予想する。
「そうか、わかった…。
その先の事も聞きたいが、時間が時間だ。明日レクト王含め詳細を報告してはくれないか?」
「了解致しました。」
アランはマルトースの言葉に感謝した。
今の迷走状態に陥っている彼の脳では、まだ自分の口から現況を伝える事はできなかった。
「外部守備に関しては厳戒態勢を解除し、通常の態勢へと移行させる。
皆が皆ここ数日の張り詰めた空気の中、心身ともに極度に達した疲労が見える。
その旨はこちらで行っておくゆえ、お前達もゆっくり休め。
…そしてご苦労であったな、よく戻って来た。」
ようやくマルトースが4人を見渡した末に微笑んだ。
城門を後にし、彼等は外庭にいた。
今夜は夜空が綺麗だから少しの間ここにいないか、と言ったレクサスの案に3人は従った。
リーフとリトはお互い肩を寄せ合いながら、そしてそこから少し離れてアランが座っている。
レクサスは大地にそのまま背を預けている。
「ちょっと前までは、よくこーやって星を眺めたもんだったな。
でも俺らも戦争に出て、
生きるのに必死でこーやって眺める気持ちをどこかに忘れてたのかもな。
…だから今思ったんだ。
それってさ、結構大事だったりするんじゃねぇか?」
「そうだね…。」
リトが静かに答えた。
遠き日々を少し思い出していた。
「なんか色々、ほんとに色々あったけどさ…」
レクサスの言葉がそこで途切れた。
今回ばかりのことではない、彼もまた今までの得たもの失ったもの全てを思い起こしていた。
「…おかしなもんだよな。
俺達が見ようとすれば、
どんなことがあってもきっと星は光ってるんだろうな。」
レクサス以外の3人も、彼の言葉を聞きながらこの星空を眺めている。
未来永劫それは変わらない。
人が何をしようと、何を思おうと。
それが自然というものである。
レクサスが、ははっ、と小さく笑った。
「うまくいえねぇけどよ、またこーやって夜空でも見ようぜ。」
ねみぃから帰ろう、そう言いレクサスは飛び起きた。
(俺達も、きっと何があってもいつまでも変わらない、そうだろ?
心配なんてするな、お前はお前だ。)
口には出せなかった。
けれどもこの先どんなことがあっても、想いは変わることは無い。
それを、アルフォンス、ピノ、アイサに誓った。