The end of the DragonRaja, Chapter 2[The start in new life]-12
国家戦は一人のシーフによりバイサス軍を壊滅に追い遣り、
ジャイファン軍が勝利するという形にはなった。
ただ誰もがこの戦争の勝利に歓喜してはいなかった。
全く逆の恐怖という感情に襲われていた。
アランとヴァルキリーを除いて。
アランは何かが脳に語りかけてきた事に一抹の不安を抱いていた。
ヴァルキリーは隊の最後部でそんなアランと並んで行軍している。
そして彼はアランに伝えることにした。
遅かれ早かれ知る事になるのだから。
「アラン」
「なんです?」
「アイサが…、死んだ。」
アランは歩を止めた。
不安の正体は儚くも悪い知らせで証明できた。
アイサの死が信じられないという思いが如実に顔に出て、立ち尽くしている。
ヴァルキリーは踵を返し、そっとアランに歩み寄った。
「奴に…あのシーフにやられたんですか!?」
アランは激しい剣幕でヴァルキリーの両肩を力強く掴み問い詰める。
「…いや、そうではない。
…ノヴァに殺された。」
アランの両手は小刻みに震えている。
「済まない、俺がついていながら…。」
アランの瞳は怒りをあらわにしている。
殺したノヴァに対して、そしてアイサを守りきれなかったヴァルキリーに対して。
ヴァルキリーはアランの怒りが痛いほどわかった。
彼自身もまた彼女が死んだ時怒りを抑える事に苦労した。
そしてアイサを守れなかったのは事実だから、アランの瞳を直視できなかった。
アランはぶっきらぼうにヴァルキリーの両肩を解放する。
彼の体が後ろへいざなわれた。
そして彼に背を向け隊へ戻るため歩き出す。
だがアランと彼の間に幾分距離が離れてから足を止め、彼に背を向けたまま話し始めた。
「団長の…せいじゃ、ないですよ…。
ノヴァの強さも知ってるし…、団長の強さも知ってる。
仕方ないんですよ…、俺らは戦争やってるんだから。
誰かを殺さないと、生き残ることはできない…。
そして生き残るのは強い方だから…。
だから…、俺は強くなります。
仲間が死ぬのは、もう見たくない。」
そう言い残し、アランは隊へ戻った。
アランの背中は泣いていた。
ヴァルキリーもまた彼の言葉を受けて己の弱さを認め、涙をこぼした。
団長ではなく、一人の戦士として。
そしてアランがアイサと同じように強くありたいという願いを口にした事で、
アイサの願う未来が潰えた事を否応なしに脳は理解してしまう。
それに気がついた彼の涙は加速した。
決して声には出さずに泣いた。
ヴァルキリーの誇り、性格がそうさせた。
ただ無情にも彼のそういった精神が、自身を雪原戦後のアランのように苦しませていた。
彼は己の弱さを知り得たが、乗り越えられなかった。
アイサへの気持ちが、それを邪魔する。
そしてヴァルキリーは誓った。
(アイサ、お前の死を無下にはしないからな。)