The end of the DragonRaja, Chapter 1[Life and death]-30
一部始終を見ていたシュリは、レクサスが飛び出したのを見て、
ゆっくりとアルフォンスの下へ寄り添い、彼の傍に立ち尽くし泣いているリーフにそっと言う。
「リーフ、ありがと、ちょっと…ごめんね。」
シュリの気持ちを理解してしまった彼女の瞳からは、止め処ない涙は抑えられることなく、
ただただ勢いを増し、流れている。
リーフは涙を懸命に手で拭いながら、足早にその場を離れた。
そう泣きたいのはシュリ自身だから。
シュリが仰向けに横たわっているアルフォンスの横に座り込む。
彼女の胸元で彼の手を左手で優しく握り、彼を覗き込む姿勢で彼の頬に右手をそっと当てる。
彼女の流す涙は、彼の顔の傍に落ちていた。
「悪い、どじった」
「そう…。」
「どじった、ついで、に、言う、よ。」
彼の呼吸はか細くなってきた。
「お前…、の、ことが、ずっと…、好き、だった。」
「そう…、私もよ…。」
彼女の目から涙が溢れ出る。
彼の目がゆっくり、ゆっくりと閉じられていく。
「も、う…、なく…、な…。」
彼の最後の力で彼女の頬に向けて左手が伸ばされる。
彼女は自分から頬を寄せ、自分の右手で彼の手を取り頬へ当てる。
「うん…、泣かない…。」
彼女の涙に濡れる温かい頬からゆっくりと雪の上に手は離れていった。
閉じられた目は、やはり最期も笑みを浮かべている。
満ち足りている笑顔が永久に遺された。
彼女は彼の首元に顔をうずめ、堪えていた感情を解放させた。
彼女のうめく泣き声はあたりに広がった。
その時だけは風は止み、雪がしんしんと舞い落ちている。
最期に気持ちの繋がれた2人を、せめて優しく包み込むように、静かに、ただ静かに……。
ノヴァは人気のないところまでくると、今までのアイサの攻撃をただかわすだけという態度を翻し、
狙いを定めた獣の如く、攻撃に転じた。
通常の横一線のアイスブラストを連射させた。
殺傷力に欠けるが、徐々に時間をかければ確実に相手の息の根を止められる。
しかし、それが失敗を招くこととなった。
アイサはノヴァの攻撃を避けずに、ひたすら攻撃を続けるので、彼女は全身傷だらけになっている。
致命傷はないが、体のあちこちから血を流している。
しかし、全身を襲う痛みによって、アイサはようやく徐々に自己を取り戻すことに成功した。
保護魔法が切れた状態で目の前にいるノヴァを倒すことは難しいと判断したアイサは、
攻撃の手を止め相手の攻撃を冷静にかわしつつ、状況把握する。
(ちっ…)
ノヴァは、シーフ対シーフの戦いは長期戦になり、このままでは不毛だと判断し、
自分の姿を周囲の風景と酷似させる技、ハイドを発動させ自分の身を隠し、
新たな敵を探すためにその場を去る。
ここまでして相手を逃すのは惜しい、しかし、正気になったシーフと戦うのは得策ではない。
彼女と同様の答えが出たアイサもすかさず、隊へ戻るべく疾走する。
負傷したことで、動きが鈍くなってしまったが、それでも弟のことが気がかりなので彼女は急いだ。