The end of the DragonRaja, Chapter 1[Life and death]-16
No.7 「theenemysraid」
「敵の数は!?」
「詳細はわかりかねますが、油断できない状況とのことです。
中でもあのノヴァが先陣を切っており、既に偵察のシーフ何人かが遣られております。」
瞬時にアランは馬を出し、左足をあぶみにかけ右足で思い切り地面を蹴って乗馬した。
「わかった! お前はそのまま城へ行き、ストリームブリンガーに仔細報告し支援要請しろ!」
定例会議翌日、来る雪原戦に備え、必要な物を生成、
武器防具の手入れに勤しんでいたアランであったが、夕食後何か胸騒ぎがした。
最低限必要な物だけを手にし、彼はレナス外部へと続くレナス市の橋に来ていた。
とりあえず気分を落ち着かせようと、彼が橋のたもとに腰掛け、空に輝く星々を眺めていたその時。
レナス外部方面から、一人の伝令が疾走してきた。
事の次第を聞き、彼はその伝令を引き続き城へと向かわせた。
アランは手綱を緩ませ、馬の後肢を内側に押して駆けださせる。
(間に合ってくれよ…。)
馬を疾駆させる騎士の後ろ姿は、レナス外部の暗い森の中へと消えていった。
なにやら廊下が騒々しい。
誰かが慌ててストリームブリンガーの部屋に向かっているようだ。
何かあったか、とストリームブリンガーの面々が思った瞬間、部屋のドアが勢い良く開け放たれた。
肩で息をしている伝令は、一息ついてから報告する。
「申し上げます! 現在レナス外部へ向けバイサス軍がかなりの規模で進行中。
先陣にはノヴァの姿ありとのことです!」
「わかった、ご苦労。皆行くぞ。」
ノヴァの名を聞いたヴァルキリーは、状況の悪さに苦虫を噛んだ。
それゆえ一刻も早く現地に向かうため、必要な言葉だけを部下に告げ先陣切って駆け出す。
ノヴァはバイサス筆頭シーフであり、開戦当初からジャイファンは彼女に辛酸を嘗めさせられている。
「行動は個人の裁量に任せる。時間が無い、行け、なんとしても守りきるんだ!」
「了解!」
城外に出て、乗馬するヴァルキリーは追いついた面々にそう言い放ち、
部下の返答を待たずして馬を走らせた。
「最低限の人数をここに残して、みんなも行って、補助が滞りなくさせて。
戦線が縦横広がりつつある、お互い十分な間隔を取って少し後方で待機して。
こっちから補助にいく必要はないから。欲しがる人が勝手にくるでしょ。
自分の保護は忘れないでよ。
あと貫通技で防護壁を破られないよう気をつけて。」
「わかった。けど説明長いって。十分承知してる。」
「シュリさんの下にいりゃ、既にそう考えてるさ。」
笑いながらそう言う者、敵の士気の高さに負けまいと自分を奮い立たせる者、
黙って誰が苦戦してるか目を光らせる者、それぞれの面々が前線へと赴いていく。
「リーフ、ここにいるみんなの補助、頼むわね。
やつらこっちに来るかもしれないから、抜かりなくね。」
「はいっ!」
リーフは彼女の冒頭部分だけを聞いて、すぐに呪文詠唱を始めていた。
返事をした時には既に側にいた戦士に呪文を唱えた後だった。
それを横目で確認しシュリは満足気な表情を浮かべる。
しかし、彼女の表情からはすぐに笑みが消える。
(レナス外部に進行している敵はざっと見て60人。
足の速い連中ばかりだから、戦士とプリーストはまだレナス外部寄りの大草原あたりか。
おそらく100人以上の行軍。
けど足並みが揃ってないのを見ると、相当自信があるようね。
甞められたものだわ。
今の所、動員数はこちらが優勢。
けれど後ろに控える敵の数を考えると、油断はできないわ。
それにしても、ノヴァが厄介ね…。
俊敏力と攻撃力を誇る彼女の対抗馬は…、
こちらはアルフォンスさんとストリームブリンガーの連中くらいかしら。
でもまだ敵のプリーストが少ないから、今はまだ彼らには少しでも多くの敵を殲滅してもらわないと…。
こちらはプリーストが多い分、殲滅力が心許無いわね。
ふぅ…、長期戦は避けないと。
プリーストの保護が切れたところを叩かれたら、そこからこちらの形勢が悪くなるわ。
少し厄介な展開になりそうかしら?
ま、私を追い掛け回す暇なストリームブリンガーの連中には感謝するけど。)