The end of the DragonRaja, Chapter 1[Life and death]-14
「いただきます。」
「はい、どうぞ〜。」
「1週間後に雪原戦があるんだ。」
食べ物をひとつ口に運んでから飲み込み、アランはすかさず言った。
そして、彼は会話の方向性の主導権を得ることに成功したと思っただろう。
ただ、その言葉にはアランの雪原戦に対する不安が内包されていたことに、
彼自身は気がついてなかった。
「あら、そうなの、いってらっしゃい。」
あまりに平凡すぎる返答に、アランは思わず口を開けてしまう。
彼の様子を見ながら、微笑むネリア。
「冗談よ、そこのお皿とって。」
アランから受け渡された皿から、食べたいものをひょいひょいと自分の小皿へと移す。
そしてネリアの顔から微笑みは消えた。
「あんた、今日なんかあったんでしょ。」
アランは黙って彼女の話を聞き続ける。
彼女が食べながら話しているので、とりあえずアランも箸を進める。
「ここんとこ雪原戦も、国家戦も大して動きなかったもんね。
ってことは、次のは勝ちに行くってことでしょ?
それにあんたさっき、言う時顔が強張ってたからさ。
ま、でもあんたも副団長とか言われてるけど、中身備わってないもんね。」
ネリアが一旦手を休める。
「あんたがどうしたいかなんてのは、あんたが一番よくわかってるでしょ。
だから私には、笑ってあんたの背中を送って上げられることしかできないもの。
けどね、これだけは約束。
あんたの考えは正しいかどうかはわからない。
自分では正しいと思ってても、周りはそうじゃないってこともあるの。覚えといてね。」
彼ははっとした。
自分ひとりが強い意志を持って行動しても、意思の方向性が異なる相手から見たら、
自分の行動は傲慢なものになるかもしれない。
いつの間にか『あの時』から、レクサスと行動を共にするうちに、
アランとレクサスは最強のコンビになっていた。
しかし、戦争は二人でするものではない。
最初はなんとか凌げても、いつか限界がくるだろう。
『あの時』からアランもレクサスも成長した。
しかしいつ屈強な敵が現れて、再び『あの時』と同じことを繰り返すかわからない。
城の廊下を歩いていた時、レクサスが言っていたことを、彼は思い出す。
(レクサスも含めて、部下を信頼しろ…か。
そうだったな、やっぱり俺はまだ副団長として板についてないな。
そんな俺でも、やっぱりお前は、最後まで俺を守ってくれるんだろうな…。)
「ありがとう、姉さん」
「ん〜?」
視線を落としているアランの顔を、ネリアが覗き込む。
「あんたの姉だもん。それより、あんた全然食べてないじゃな〜い。
私の料理が食べられないって言うんなら、リーフへの援護、しないからねっ。」
ふくれっ面のネリアを尻目に、
もうどうにでもなれと言わんばかりに、アランは赤い顔で勢い良く食べ始めた。
彼女の顔にはいつもの優しい微笑みが彼に向けられている。
ただ食事を続けようとする彼女からは微笑みは消えた。
「気をつけてね…。」