The end of the DragonRaja, Chapter 1[Life and death]-11
ひと悶着のおかげで、リトと一緒にいた幼馴染の姿は視界に入っていなかった。
「リーフか」
ここでまた、アランは失敗してしまったことに気がついた。
リーフの名前をここで言ってしまったがために、
アランは今、彼女がこの場にいることにようやく気がついたことを告白してしまった。
しかしリーフは、彼女らしい反応を彼に返した。
「もう、やっと気がついたの?
まぁさっきの騒動じゃ、アランもレクサスもリトへ視線が集中するのも無理ないけどね。
見てておもしろかったから許す。」
そう話しながら肩幅程度に足を横に広げ腰に両手をつく姿は、やはり姉に似ている、
アランはそう思った。
「ごめんな。」
「私は別にいいよ、リトは怒ってたけど。
今度リトにあった時、覚悟しといたほうがいいかもね。」
「…そうかも。けどさっきはほんとにびっくりしたんだぞ。
いったいいつから聞いてたんだ?」
「あ、やっぱり気がついてなかったんだ。
マルトース様に私が呼ばれててね、リトは一緒について来てくれたんだ。
それで2階からの帰り道。
たまたま右の廊下からアランとレクサスが出てきて、城門に向かって歩いてるのを見つけたの。
そこでリトが声をかけようとしたら、二人があんな話してるから、
さっきみたいになっちゃったってわけ。」
「…なるほどな。」
アランはこの偶然にただ苦笑いするしかなかった。
「ま、雨降ってきてるしさ、おれらも早く帰ろうぜ。」
「あ、うん、お母さんに夕飯の買い物頼まれてるから、ちょっと寄っていい?」
「嫌だ、こんな時に寄り道したら風邪ひいちまう。」
「あ、ならリトに会った時知らないよ?」
(完敗だ、今の俺には分が悪すぎる。)
「わかったわかった、日も暮れてる時間だし雨も降ってるのに、
お前を送っていかなかったらおばさんに怒られるしな。」
「決まりね、無事にお姫様を送ってってね、白馬の王子様。」
「お前を送るのに、馬をわざわざ出せるか。」
「いいじゃ〜ん、またせっせと寄付して新しいの買えば〜。」
「ほらっ、いくぞ。」
アランがぶっきらぼうに言うと、頬をふくらませたリーフが少し遅れて走り出した。
しんしんと降る雨の中、雨の冷たさでレクサスとアランは、『あの時』を思い出していた。
レクサスはアルフォンスに次ぐ弓の名人と、
アランはジャイファン随一の剣士と呼ばれるほどに成長した。
レクサスは城門へ続く廊下でアランに言いかけたことを、噛み締めてから呟きだした。
「お前のこと、守るからな、絶対に。」
『あの時』自分が泣いた姿と、今の強くなった自分の姿を比べながら。
「ひぇ〜、冷た〜い。」
しかしアランからの反応はなかった。
隣で走っていた彼はいつしか立ち止まっていた。
頭を手で覆っているリーフが足を止め、アランの数歩先で彼を見つめる。
「アラン?」
アランは自分の手を握り締めながら斜め上の空を見つめていた。
リーフには聞こえないように、小さく呟く。
「もう、仲間を、傷つけさせない。」
『あの時』傷ついたレクサスの姿と、目の前にいるリーフの姿を比べながら。
リーフに追いついたところで、そっと言葉にする。
「ごめん、行こう。」
二人はまた走り出した。
仲間を守るために人を殺さねばならない事実。
今のアランとレクサスはその事実を天秤にかけるまでもない。
あの時も雨が降り出した。
けれど今はあの時とは違う。
空は二人が強くなり、仲間を守るために人を殺してしまうことに対して、
悲しそうに冷たい涙を流しているようだった。