記憶と妄想-9
美菜子は富田をベッドルームへ誘い、富田は美菜子を部屋の真ん中に残して夫婦のベッドに座った。
「不感症・・・って言った?」
「あ・・・はい」
見つめられてもじもじしていた美菜子が真顔になって、富田のストレートな質問に答える。
「そんな風に思えないんだけど・・・どういう感じなんだろう?」
「あ、あの・・・全然、濡れないんです・・・だから・・・あの・・・」
どう説明したらいいのか分からなくなる。でも、分かってほしいから・・・。
「何してもダメだった?乳首を舐めたり、クリを弄ったりしても?」
「はい・・・」
美菜子は小さくこくんと頷く。富田はだんだん険しい表情になったが、股間の膨らみは相変わらずでそれが美菜子の唯一の支えになっていた。
「濡れないって言うのは、どういう感じになるの?」
「・・・乾いてるんです・・・愛液・・・が、全然・・・出なくて・・・だから、無理に挿れられると痛いだけで・・・お前はもう、女じゃないって・・・」
「言われたの?」
「はい・・・」
美菜子は込み上げてくる涙を必死で食い止め、富田は“はぁぁぁ”と深い溜め息を吐いて頭をガシガシと掻く。
「今・・・美菜子ちゃん、すごくエッチな格好してるの、自分で分かってるよね?」
「たぶん・・・?」
質問の意図が分からず、美菜子は首を傾げながら答える。富田がまた溜め息を溢す。
「一番考えなきゃいけないのは・・・美菜子ちゃんの抱えてる問題を解決することなんだけど・・・」
言葉を切った富田が一段と大きな溜め息を吐く。
「ああ、ごめん・・・頭ん中、美菜子ちゃんの、そのおっぱいをどうすれば一番堪能できるかって事でいっぱいなんだ」
富田は下を向き、“ダメだ、ダメだ”と抱えた頭を振る。
「富田さん・・・よろしければ、お好きなようになさってください」
美奈子がポツンと呟くと、富田はようやく顔を上げたが、美菜子の方は見ない。
「だけど・・・ああ、もう・・・」
また頭を抱えてしまったので美菜子は富田に近寄った。
「美菜子の身体、もう誰も触ってくれないんです。ご迷惑じゃなければ、富田さんのお好きなように、ね・・・」
「・・・あ」
目の前に立っている美菜子の足元から富田の視線がゆっくりと這い上がってくる。