第十七章 性豪-2
「入りなさい。」
ドアを開くと正面に大きなダブルベッドが目に入る。激しい目眩に包まれる。
「こちらへ。」
声の主に目を向ける。見覚えのある素敵なおじ様、隆造がガウン姿でグラスを片手にソファーにゆったりと腰掛けていた。そして、紳士の正面のソファーへ右手を差し出し、舞を招いていた。
脚が動かなかった。体の震えが止まらない。舞は、勇気を振り絞って紳士の言葉に応えた。
「ご無沙汰しています・・・」
「久しぶりだな。お前の活躍を見守っていたぞ・・・どうした、怖いのか?」
「はい・・・ 緊張してしまって・・・」
「緊張?体が動かないのか?それならその場でいい。服を脱いでみろ!」
「!!!!!」
「手間を取らせるな。ヒールはそのままでいい。脱いだら、ホールの真中のスポットライトに当たる場所に立つんだ。」
「は、はい!」
隆造の声は逆らうことを許さない響きを持っていた。舞の体が弾かれたように動き出す。
舞の長い手が、純白のミニドレスに伸び背中のファスナーを下ろしていく。隆造に背中を向ける。ゆっくりとドレスが足元に落ちていく。レースの下着に包まれた舞の見事なプロポーションが露になる。ドレスを足元から抜き取ると、それを胸元で抱えるようにして、舞は隆造に向き直った。
「両腕を上に。」
体の震えが止まらない。それでも舞は、隆造に対して半身となり。後ろ足に体重を掛けると、後ろ髪を両手で掻き揚げた。折れそうなほどに細いうなじ、華奢な肩周り、胸の膨らみ、くびれたウエスト、ヒップから太ももへの柔らかなライン、そして、あまりにも長い手足まで、舞の見事なプロポーションの全てがスポットライトに浮かび上がる。
「流石にモデルだな。見事だ。」
舞のプロポーションを目の当たりにし、隆造は満足の表情を浮べるが、次ぎの瞬間には厳しい表情に戻っていた。
「舞。最初に聞いておこう。お前は、ここへ何をしに来たんだ?」
「そ、それは・・・」
「私に抱かれる為、そして、私の子供を宿すためにここへ来た。違うか?」
隆造の言葉が、舞の僅かな希望を奪い去る。
「はい。おっしゃる通りです。」
「おっしゃる通りはないだろう。舞の意思を聞いている。自分が何をしに来たのか舞の口で言ってみろ。」
「は、はい。舞は・・・お父さまに抱かれる為に・・・」
舞の瞳に涙が溢れ、頬を零れ落ちる。
「お父さまの子供を・・・宿すためにここへ来ました。」
「何故、それを望む。賢治に強要されたとしても、拒否しなかった理由があるはずだ。舞がそれを望んだ理由は何だ?」
何故? 舞は、何故ここに来たの? 舞がここへ来ることを望んだ理由・・・ それは・・・
今の舞がいやだった。賢治に否定され、全ての自信を失った惨めな舞が嫌でたまらなかった。舞は光の当たる世界へ戻りたい。賢治に愛される舞を取り戻したい。そう思うと言葉が自然と出てきた。
「舞は翼を失いました・・・
お父さまは、どうして舞を迎えてくれたのですか?
お父さまが舞を気にいってくれるのなら・・・
舞をお父さまの色に染めて下さい。
お父さまの色に染まることで、舞は羽を取り戻し、
もう一度、大空を羽ばたくの!」
「気に入った。こっちにこい!」