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掴み取れない泡沫
【大人 恋愛小説】

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14.太田塁-2

 柿の種を払い終わるとゴミ袋に入れて捨て、もう一本の酎ハイとビールを、冷蔵庫から出した。「サンキュ」と言いながら、長い腕がすっと伸びてくる。
「うまくやれよ、矢部君が身体を許した唯一の男は智樹なんだからな」
 ビールを口元に持って行く手を止めて、目をまん丸にして俺を見ている。
「もしかして、君枝とその、身体の関係にはなってないの?」
 アハハと軽く笑い俺は「大丈夫、なってない」と言うと、智樹は心底安心したような笑みをこぼしたので、ぶっ飛ばしてやりたかった。「どんな勘違いだよ、もっと自分に自信持て」
 緩んでいたネクタイを更に緩めて、気が抜けたみたいな顔でビールを呑んでいる。

 ここから先、俺が協力してやれる事は極端に少ない。智樹と矢部君の幸せの為に、俺ができる事は何だろう。ぼんやりと、酎ハイを呑みながら考える。


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