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恋に変わるとき
【青春 恋愛小説】

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女ったらしとクモの巣女-2

「まあ、いい男だもんねえ、臼井くんは」


輝美がシシシと思わせ振りに笑う。


その笑顔は、昔の漫画でよく見た、黒い全身タイツを着た小さな悪魔のような、そんな表情だった。


「輝美、臼井陽介のこと知ってんの!?」


「知ってるも何も有名じゃん、彼。“超がつくほどの女たらし”だって」


お、女たらし!?


口をあんぐり開けたままのあたしに、輝美はご丁寧にその内容を説明してくれた。


なんでも肉体関係を持った女は100人を超え、彼女がいても3股、4股は当たり前、セフレやキープは二桁はいて、その日の気分によって女をとっかえひっかえしてるとか。


あまりの内容に、愕然と口を開けたまま固まるあたし。


まるで奴が別次元にいるような、遠い異国の人間のように思えた。


いや実際別次元の人間だ。


だってあたしは……。


「まあ、バージンの恵には刺激の強い話だったかな」


「輝美!」


あたしが今まさに思い浮かべていたことを、そっくりそのまま言葉にされた気まずさで、あたしはついつい大きな声を上げてしまった。


「だって、実際その通りでしょ。下ネタが大の苦手な純情恵ちゃん」


「…………」


「せっかく素敵な彼氏がいるんだし、サッサと女になっちゃえばいいのに。あんまり焦らしたら寺島先輩かわいそうだよ」


輝美が冷やかすように言うけれど、あたしはうまく返せなかった。


だって、それは紛れもない事実なんだから。


あたしには付き合ってもうすぐ3ヵ月になる彼氏がいる。


おんなじゼミの先輩の寺島優真(てらしまゆうま)さん。


黒いフレーム眼鏡がトレードマークの、ちょっと地味だけど優しい優しい彼氏。


少し弱気で、強引さなんて微塵もないような所謂草食系男子だけど、男の人と初めて付き合ったあたしには、一緒にゆっくり歩いて行けそうな、そんな安心感のある人だった。


キスだって、ついこないだやっとしたばっかりで。


触れるだけのキスをした後、真っ赤になって「恵、大好き」とだけ言ってくれた彼が、あたしは大好きだった。


大好きな人に、あたしの初めてを捧げるのは自然の流れだと思っている。


それは頭ではわかっているんだけど……。




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