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恋に変わるとき
【青春 恋愛小説】

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女ったらしとクモの巣女-3

「へえ、男まだ知らないんだ」


黙り込むあたしの頭の上に、突然降ってきたよく通るアルトボイス。


思わず目を見開いて固まってしまう。


その視線の先には、あんぐりと口を開けた輝美の顔。


聞き覚えのあるこの声。忘れたくても忘れられない憎たらしい口調。


この声の主は……!!


あたしがギロッと凄みながら後ろを振り返ると、案の定、件の“超がつくほどの女たらし”がニヤニヤした顔で立っていた。


「あ、あんた……!!」


「ダメだねー、アンタは。そんなとこまでお堅い女だったんだ」


臼井陽介はクククッと笑いながらあたしの隣にあった椅子に座り始めた。


「ちょっと、何座ってんの!!」


「いやね、面白そうな話してるから、ついつい混ざりたくなって」


悪戯っぽく笑う奴は、こないだと同じショルダーバッグから、セブンスターのボックスを取り出すと、口にくわえ始めた。


「ちょっと、この席禁煙!」


「なんだよ、別にいいじゃん。後ろのテーブルの奴らだってバカスカ吸ってんじゃん」


そう言って、奴はあたしの後ろのテーブルに座る5、6人の男子学生の輪を親指で指差した。


むっかつく……。


「それはそうと、出席票出しといてくれた?」


おそらく奴はこちらの話の方が本題だったらしく、煙草の灰を灰皿に置いてからおもむろにあたしの顔を覗き込んだ。


ちょっ、ちょっと! 顔が近いです!!


男にしては結構長い睫毛に不覚にもまたまたドキッとさせられたりなんかして。


こないだはキャップをかぶっていたから表情はそんなに見えなかったけど、今日はそんなの被ってないし、この近距離のせいもあって、奴の整った顔に余計に顔を上げられなくなる。


「だ、出してないわよ! こないだは黄色い出席票だったもん!!」


なんかポッと出のこの男にいきなりペースを乱されてばかりで悔しくなったあたしは、そう言って嘘を吐いてしまった。


「え、マジで!? 代筆とかやってくんなかったの??」


「なんで、あたしがそこまでやってあげなきゃいけないのよ」


「うわー、マジで融通きかねえ、この女。こういう場合、普通余分に出席票もらって代筆してやるのが優しさってもんじゃねえ?」


臼井陽介は盛大なため息を吐くと、しっかりセットされているであろう明るい茶髪をグシャリと握り締め、小さな舌打ちをひとつした。








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