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恋に変わるとき
【青春 恋愛小説】

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ムカつく男-4

「ねえ、クルミさんってホントにお母さんなの?」


教室をこっそり出て行こうとする彼の背中に質問を投げかける。


すると、ゆっくり彼はこちらを振り返ってニイッと悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「うん、母ちゃんのように温かく俺を包み込んでくれるオトモダチ。じゃね」


そう言って、奴はあたしに小さく手を挙げて教室をあとにした。





残されたのは間抜けに口を開けたままのあたしの姿。


オトモダチって……。救急車で運ばれたお母さんはどうしたのよ!!!


騙されていたことに怒りがドンドン湧き上がってくる。


しかも、彼女じゃなくて、オトモダチに泊まれる? とか生理終わった? とか普通聞かないでしょ!


あたしは奴と、顔も知らないクルミちゃんがベッドで裸で抱き合う姿を想像したくもないのに頭に浮かべてしまい、咄嗟にガーッと頭を掻き毟った。


あたしの奇行に、周りの席の人達がギョッとした顔をこちらに向ける。


ふと我に返って、あたしはハアハアと息を荒げながら下を向いて顔を隠した。


何なの、アイツ!! 


そう言って受け取った出席票に視線を投げかける。


――K8‐369 臼井陽介 メディチ家


白い出席票には汚い字でそう書かれていた。


なんであたしが、女に会いにいくから講義をサボる男に協力しなくてはいけないのか。


さっきの去り際の男のしてやったり顔が再び浮かんできて、奥歯に力が入る。


そして、怒りが頂点に達したあたしは、一つの結論を出した。


こんなもん、提出してやるもんか。


悪魔の笑みを浮かべるあたしに、またまた周囲が怪訝そうな顔でこちらを見てきた。


再び慌てたあたしは、キュッと口の端を結んで真面目な顔を作る。


いかんいかん、真面目にノート取らなきゃ。


なんとか気を取り直して、シャーペンを握った時、前の席から出席票が配られてきた。






――それは白ではなくて、黄色い出席票だった。




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