あたしの彼は-2
その時のセックスは、ベッドの上で重なる綺麗なものではなかった。
まるで犯されるみたいに玄関で立ったまま後ろから激しく突かれていた。
でも陽介に余裕がなければないほど、あたしの胸は高鳴り、身体は淫らに快楽を求め始める。
煌々と明るい電気の元で身体の隅々まで愛する男に見られていると思うと、あたしの身体は羞恥となんとも言えない満たされた気持ちで埋め尽くされていた。
それ以来、あたしは陽介の求めること全てに応えてあげたいと思うようになった。
あたしがそう思えるようになってから、彼と交わる行為がより一層身体と心を満たしてくれるようになったのだ。
「初めて会ったときは、“なんてお堅い女”なんて思ってたけどな」
陽介はあたしの頬に優しくキスをしながらクスリと笑った。
「あたしだって“なんてチャラそうな男”って思ったよ。正直言って第一印象は最悪だったもん」
「だよなー、俺が話しかけても、めちゃくちゃ嫌そうな顔するし、相当嫌われてるなって思ってたよ」
「だって……それは……」
陽介は気まずそうに俯くあたしを、優しい笑顔で見つめていた。
整った顔でそんな優しい顔されたら、ますます恥ずかしくてまともに陽介の顔なんて見れない。
「そこまで俺を嫌うような女、こっちから願い下げだったのに、不思議なもんだよな。今じゃこうして、あんなことやこんなことまでするような深い仲になっちまって……」
「もう、すぐ変な話に結びつけるのはやめてよね!」
でも、すぐに彼はこうやっておどけてあたしをリラックスさせてくれる。
こうやってあたしは見事に陽介の手のひらで転がされて、それが悔しくもあるけど、ちょっぴり嬉しかったりもするのだ。
あたしと陽介が付き合うことになったとき、友達は“恵が陽介の毒牙にかかった”ってさんざん嘆いていた。
それほど陽介の評判は、ひどいものだった。
100人斬りとか、二股ならず三股、四股は当たり前、セフレは二桁はいるとか、噂が噂を呼んで、周りからは相当な女ったらしと呼ばれていたらしい。
あたしは後からその噂を知ったんだけど、それを知らなくても陽介との出会いは最悪なものだったよな、なんて少し昔のことを思い出していた。