ご褒美の時間-1
わかってはいたが、結局の所、お仕置きもご褒美も同じようなものだ。
グレーテルの身体は、床へ蜘蛛の巣状に張られた糖蜜の網へ、しっかり貼り付けられていた。
少し腰を浮かせた大の字で囚われている様は、可憐な白い蝶のようだ。
「離してよ!」
これも無駄と判っているが、一応は抗議してみた。
だが案の定、変態悪魔はニヤニヤ笑うだけだ。
「ね、綺麗だろ?味も気に入ると思うよ」
ピアニストの手には、ホワイトチョコでできた太い棒が握られていた。
表面に色とりどりの金平糖がちりばめられているそれは、男根の形さえしていなければ、かわいらしく目にうつるかもしれない。
それの使用用途は容易に想像でき、子宮の周辺がズンと疼いた。
今日はまだ手付かずの膣内が、勝手にヒクヒク痙攣する。
「待ちきれないって顔してる」
空いている手で顎を捕まれ、真っ赤になった顔を面白そうに覗き込まれる。
つるつるした白い塊を蕩けた花弁にこすりつけると、すぐに表面が体温で溶け、ぬめつきだした。
可愛そうなくらい小さな穴に、ぐいっと一気に突き入れられる。
「あぅっ!」
抜き差しされるチョコの張り形は、グレーテルには大きすぎる代物だし、表面に浮かぶざらついた金平糖が、柔らかい膣壁を容赦なく擦りあげる。
「っは……ぅ……ん、ん……」
そこにも味覚があるんじゃないかと思うくらい、甘い痺れが広がっていく。
噛みしめて耐えようとした唇はあっさり解け、悩ましげな吐息と切れ切れの声が零れ落ちていく。
胎内の熱で溶け出したチョコが、白い液体になって結合部から溢れだした。
「困ったなぁ。グレーテルの中が熱すぎて、すぐ溶けちゃうよ」
セリフと裏腹に愉快そうな声音で、ピアニストは新しいホワイトチョコの男根を宙から取り出した。
半分ほどの太さになってしまったチョコを引き抜くと、愛液と混ざった白い液がどぷりと溢れる。
「はぅんっ!」
「まだ全然足りないでしょ?おかわりあげる」
白液にまみれているそこへ、二本目が突き入れられる。
「んぁ!あ、あああ!!お、奥で、あ、あああやぁぁ!!」
最初のチョコから外れてしまった金平糖が、まだ中に何個も取り残されていた。
それらが新しい棒によってさらに深へ突きこまれる。
曲を奏でるようにリズミカルに突き動かされると、グレーテルの身体もそれにあわせてビクビクはねる。
淫らな下の口は、差し込まれた菓子にむしゃぶりつき、涎をたらして吸い付く。
「こっちもすぐ溶けそ……」
館全体に、地鳴りと衝撃が走った。
まるで、なにか巨大なものが体当たりしたようだ。
しかもその何かは、このお菓子の家を大喜びで食べているらしい。ボリボリと壁をかじるような音がする。
ピアニストの顔にわずかな緊張が走り、見えない手が全ての窓へ鎧戸を下ろす。
「また来たね……追い払ってくるから、いい子で待ってるんだよ」
グレーテルの額へ軽く口づけ、悪魔は微笑む。
「あ…」
館にきてからの記憶は、どれも霧がかかったようにあいまいだが、何度かこんな事があった気がする。
この時は彼の力が弱まるのか、他より幾分鮮明に覚えているのだ。
ピアニストはいつも『追い払ってくる』とグレーテルを一人残し、彼が戻るまで鎧戸も扉も一切開かない。
だから、霧の向こうからやってくる襲撃者がどんなものか、グレーテルは何も知らない。
ただどうやら、悪魔にとっても強敵のようだ。
戻ってくると大抵、くたびれはてていたし、大怪我をしてきた事もあった。
もっともその傷は、次にグレーテルが目覚めた時には全て癒えていたが。
「外に、何がいるの?」
白と黒の後姿に、何度も尋ねた事をまた聞いた。
「知らなくて良いものだよ」
振り返りもしないピアニストの返答も、相変わらずだ。
そして扉が閉まる間際、サドっ気全開な声が聞えた。
「そうだ……余計な事考えないように、触手たちとでも遊んで、待っててよ」