極限詭弁-3
「ふっ、ふふふ…」
僕はおかしくなんかない。
でも、口元が卑しい形に歪むのが分かる。おかしくてどうしようもない。
冷えたフローリングの廊下に転がる4つの肉塊。
それはかつて家族と呼んでいたもの。
父
母
妹
まだ赤ん坊だった下の妹…
順に蹴飛ばしながら、顔を見てゆく。
楽しくて仕方がない。
凄まじいが、小気味良い血液の匂いに酔ってしまったのか、含み笑いが止まらなくなる。
僕は異常なのか?
いや、そんな筈はない。
僕がおかしい筈がないんだ。
もう一度転がるものの顔をよく見る。
父と母だったモノの顔がぐしゃぐしゃにひしゃげ、肉が抉られたような骨が覗く傷が目立つ。
これが、僕のしたこと?
「クッ…クククッ」
なんだ、そうだ。簡単なことじゃないか。
僕は今まで17年間、何を悩んできたんだ。
悩むことじゃない―…
不要なものは黙らせれば良い。
そうして二度と、煩く出来ぬよう――……
「ふぅ、次は―…」
家の中に立ち込める死の臭いは、優等生を演じてきた僕の仮面を完全に引き剥がした。
もう、戻れない。
いや、戻らない。
大丈夫、僕は冷静だ。
絶対に間違いなんか犯したりしない。
『キュッ、シャー…』
4度目。もう一度だけシャワーを浴び直したら、
また優等生の仮面を被り―…
また、偽りの日々が始まる。