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彼女はそれを、重いのを我慢して、校庭に持ち出した。揺れに揺れる内臓のせいでかなりてこずったが、何とか校庭のど真ん中に運び出した。
「ああ、何度見てもいい出来栄え」
コンクリのブロックに支え、月光を受け不気味に光るそれを、彼女は艶やかな表情で見つめていた。早く学校の皆に観て貰いたい。そして皆の叫び声や鳴き声、怒り狂う声などを、私に聞かせて欲しい。
日が上がり、明日になる。それから起きる事態に彼女は胸を膨らませながら、自分の作品を見つめていた。
だから、と言うべきか、しかし、と言うべきか表現に困るところではあるが、彼女は自分の意識が遠のくのに気づくために、相当の時間を要した。
「確かに、なかなかによい作品ですな『踏み外し』てしまったお嬢さん」
誰だろうか?壮年の男性がいる。おっさん、とは表現し難いナイスミドルな紳士的面持ちだが、紳士は普通スタンガンなど持っていないだろう。
どうして自分の体はこんなに重いのだろう?まるで神経と筋肉が繋がっていないみたいだ。いや、恐らくこれは気絶する寸前なのだろう。これは恐らくこれはスタンガンを押し付けられたからだろう。
スタンガンのアンペアが弱かったのか、彼女の意識はいまだ消えてはいない。だが意識がなくなるのも時間の問題だ。何故って、スタンガンを持った紳士然とした彼女の首を絞め始めた。
「確かにあれはよい作品ですね。しかし私には貴方の方がもっと良い作品になれると確信しております」
紳士な男はそう言うが彼女にはほとんど聞こえてはいない。ぴきぴきと喉の奥からいやな音。かふう、と空気の漏れる音がどこからとも無く聞こえてくる。
…そういえば、さっきラジオで『人外』らしきニュースを報道してたか。そういえば昨日襲われたのも10歳代でしたわね。
「かっ」
と、断末魔にもならないような断末魔を上げ、芸術家は死んだ。
「ああ、素敵だよ。可愛い可愛い私のお人形さん」
と紳士は芸術家の耳元で呟く。
了