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【サイコ その他小説】

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芸術家である彼女は考える。

『ルージュ.カーニバル』の脅威が去ってから二週間。学校で、あの小さな小さな生徒が居なくなってから、早や六日が経った。

小さな小さな生徒さん。それはどうも北に向かっているようだ。どうしてそれが分かったかというと、それは実に簡単な理由で、必ず死体が落ちているからなのだ。それらがどうして小さな小さな生徒さんがしでかしたものかが分かったかというと、それは実の簡単な理由で、殺し方がどれもかれも同じようなもので、まるで鰐に食いちぎられたかのように腕が、若しくは足が、若しくは胴体が、若しくは頭が、若しくは腕と足と胴体と頭が、ばっさりとエグられていたのだ。

まるで人間削岩機ね。

そう彼女は考えたが、しかし誰もその考えには賛同してくれはしない。まあいい。何時の世だって斬新過ぎる考えは理解されないものと決まっている。

どうにせよ彼女にとっては得な話なのだ。

あんな品の無い人間に自分の大切な作品の材料を取られて堪るものですか。

彼等の様な俗な無い人間が起こした事件のせいで町中が厳戒態勢になってしまった。とばっちりを受けるのはこの私なのだから、全く勘弁して欲しいものだわ。

彼女は意味も無く自分の泣きぼくろを触った。癖なのだ。まあしかし、兎にも角にもこれからは、ある程度は町の警戒も解かれて自分の活動もやりやすくなるだろう。なにせ自分は一日に36人もの人間を殺す馬鹿とは違うのだから。

『ルージュ・カーニバル』。全くもって理性の欠片も無い方でしたね。食べるために人を殺すなんて、貧困国の最後の手段じゃないんですから。お肉なんて精肉店に行けばいくらでもおいてあるでしょうに。

全くもって迷惑千万な話ではないか。そんな幼稚な理由のために自分がなす、崇高な行為の邪魔をしないで欲しいものである。

彼女は立ち上がった。立ち上がって壁にかけてあった人骨ナイフを手に取った。それは彼女の手作りで、人間の解体することを第一に考えられ、何度も形を変えた。ちなみにこれは第九作目だ。

矮躯の殺人鬼さんは…はっきり言ってあの方が居なくなってくれたのは、かなりうれしい誤算でしたわね。

いくらなんでも人間を一薙ぎで真っ二つにしてしまうような化け物と、お互いの殺人活動の途中にばったり出くわしてしまったりしたら、とてもとても気まずい。あくまでも芸術家の彼女にとっては、それは単なる手段であって目的ではないのだから。

「そう言えば」

そういえば小さな殺人鬼さんは何のために人を殺すのだろうか?余り考えたことが無かった。マスコミや警察も「精神異常のあるものの犯罪」と断定しているのだが、自分はそうは思っていない。

その考察に対しての裏づけは、ゼロだ。なんとなく、そう感じただけ…というか、どこかで見たような気がする。淡々と人を殺すというか、全く持って殺人に自分の意思を反映させないというか…

誰かを模倣しているような…そんな気がするわね。

はて、誰だったろうか?いつかどこかどこかで見たような。いや、実際に見たわけじゃないのだけれど、何か、何時だったか、自分の人生すらを狂わしたような、大きな存在だったような…

「まあ、いいわ」

彼女は手中にある人骨ナイフを弄びながら、考える。

さて、次の作品はどういった趣向のものにしようかしら。

芸術家である彼女の考えることは何時もそればかりである。

彼女は自宅のドアを開け、外に出る。今の時間は昼と夜の混じりあった時間、つまりは逢魔が時だ。


空の色は、昼間の青でもなく、夕方の赤でもなく、その二つが交じり合った色、紫だった。地面の色も空の色の真似をしたようで、空と地面の境目が薄れている。

芸術家の彼女はこの時間が好きで、『踏み外す』前も、この今の時間の、この目の前に広がる感動そのものを、幾度と無くカンバスに刻み込んだ。

もちろん今でもこの感動を描く。自分なりに編み出した『手法』を用いて、このリアルな感動に劣らないような作品に昇華させるべく、日々研鑽を積んでいる。

ちなみに自分なりに編み出した手法というのは、言うまでも無く人体を使うことにある。というより、この手法こそが、自分が人体アートに踏み込むための後押しだったのかもしれない。


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