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新・ある季節の物語
【SM 官能小説】

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(秋編)-5

 ………



初めてキムラさんに抱かれてから、三年がたつ…。

あのときと同じように長屋の垣根から漂ってくる金木犀の濃い匂いが、自分の中の女に、あら
ためて私を気づかせるようにからだの奥を擽る。


二年前、キムラさんは、ドイツでの新しい仕事のためにフランクフルトへ赴任していたときに、
交通事故で亡くなった。あまりに突然の訃報だった。


…ミツエ、半年後には仕事を終えて帰国する予定だ…そしたら結婚してくれないか…

キムラさんがフランクフルトに出発するとき、私に言ったその言葉が彼の最後の言葉となった。

…待っていて欲しい…

空港のゲートで見送った彼のその言葉に、私は瞼の裏がかすかに潤んできたのを憶えている。



三ヶ月前、私は勤めていた建設会社をやめた。

突然、ミセス向けのファッション雑誌のモデルとして、スカウトされたためだった。キムラさ
んのいた会社の常務が、ある小さな雑誌社に私を紹介してくれたのがきっかけだった。


とても信じられなかった…。


私の写真がある雑誌に掲載されたのをきっかけに、私はモデルとして、いくつかのミセス向け
の週刊誌のグラビアさえ飾るようになったのだ。「美魔女の香り…ユキタミツエ…」なんて、
店頭にならんだ雑誌の中の自分の姿に、私は、まるで夢でも見ているかのようだった。



秋晴れの日曜日…

都心のホテルで、私は、久しぶりに和服姿で姪のミナコの結婚式に出席していた。私の姿に振
り返る男性の客の視線に、私は自分がまったく別の女であるように感じた。

…ミナコ、あの和服の女の人って、確か雑誌で見たことがあるけど、ミナコの知り合いの人な
の…きれいな人よね…

…えっ、ああ…ミツエ叔母さんのこと…すごく美人でしょう…私も久しぶりに会ってびっくり
しちゃった…。

結婚式の披露宴で、新婦のミナコを囲む友人たちの小声を耳にする。私は、かすかな恥ずかし
さをおぼえながら、その声から逃れるように披露宴の会場から離れ、ひとりホテルの庭園の中
に佇む。


秋の澄みきった青空から降りそそぐやわらかな陽光が、淡い光となって私を包み込む。
そして、遠くへ忘れようとしていたキムラさんのことが、やっぱり私の瞳のなかに優しげに浮
かんでくる。


突然、携帯の電話が鳴る…。


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