(秋編)-3
「きれいだ…いや、実に美しい…よく似合うじゃないか…」
キムラさんは、私にそう囁きながら、私の頬に湿った掌をあてる。彼が私にプレゼントとして
送ってきた葡萄酒色のドレスを身に纏った私は、まるで彼に呪縛されたかのように体が強ばる。
彼の顔が私の顔を覆うように近づき、あたたかく乾いた唇がゆっくりと私の唇を塞ぐ…。
そして、彼の手が私のドレスの腰の縊れをなぞるように這い始めると、私の呼吸が胸の奥で
微かに乱れていくのがはっきりとわかった。
「えっ…どうして…こんなことをするの…」
「…きみが、ぼくのものになるためさ…」
そう言いながら、キムラさんは、私の首筋をゆるやかになぞり、ゆっくりと黒い首輪を嵌める。
ひんやりとした首輪の滑らかな革の感触が、まるでさざ波のように肌に広がり、首筋から体中
に溶けていく。
でも、キムラさんにそうされることが、なぜか嫌ではなかった…。私は、不思議なくらい素直
に彼の首輪を受け入れたのだ。こんな気持ちになったのは生まれて初めてだった。
首輪を嵌められた私は、壁の大きな鏡の前に立たされる…。
ドレスを脱がされ、肩紐がわずかにずり落ちた滑らかなシルクの白いスリップの中から、透け
た乳房が蕩けるように覗き、柔らかい太腿の付け根を覆う薄いショーツには、渦を巻いた陰毛
がむせかえるように息づいているのか、その翳りの輪郭を色濃く滲み出させていた。
鏡に写った私の姿をじっと見つめるキムラさんの蒼い瞳が、胸の奥を鷲づかみにするくらい迫
ってくる。
彼は私の背後に寄り添いながら、首輪をした私の首筋を愛おしくなぞり、スリップの上から、
ゆっくりと乳房に掌を這わせる。しっとりとした彼の指先から、絡みつくような甘い匂いが
漂い、私の胸の鼓動が乳首の先端をわずかに湿らせる。
まるで私の心の中の見えない殻を剥くように、キムラさんは優雅な手つきで私の白いスリップ
とショーツをゆっくりと脱がせていく。少しずつ露わにされる自分の裸身を鏡の中に眺めなが
ら、別れた夫の前でさえ、私は心とからだのすべてを晒したことはないような気がした。
…怖がらないで欲しい…と、キムラさんは、私の耳元に優しく囁くと、鎖の付いた革枷を後ろ
手にした私の手首に嵌めた。私が始めて感じるどこか不思議な感覚だった…。キムラさんに
囚われた拘束感によって、からだの芯が甘い蜜のように蕩けていくようだった。
キムラさんは、後ろ手に革枷を嵌めた全裸の私の前に跪くと、薄い笑みを湛えたほのかな唇を
私の秘所に近づける…。
そして、私の下半身を両腕に包み込むように抱きよせると、漆黒にゆらぐ陰毛を唇で掻き分け
ながら、どこか恥じらうように閉じられた貝肉を舌先でなぞっていく。まるで私のからだが
解き放たれたように肉の割れ目が潤み始めると、幾重にも重なった花びらが、冴々と芽生え
開いていくようだった。
やがて、後ろ手に鎖の付いた革枷を嵌められたまま、私はキムラさんにベッドに導かれる…。