家庭-1
運とは一つのボタンを掛け違うと、こんなにくるってくるものなのか・・・と想いながら電車の改札を通った。
いろいろな人間が行き交う中、この中で自分が一番不幸ではないか・・・なんて、ふっと考えてしまう。
ついこの間までは、こんな事を考えたことすらなかったのだが、どんどん考えがネガティブに変化してくる。
職を失い、瑞穂も・・・妻との関係も冷めていて・・・何も残っていない・・・
自宅への帰り道15時ぐらいなのに、周りにいる人々は何をしているんだろう・・・
俺は何をしているんだろうと考えた。
駅に着き10分歩くと自宅がある、近所の奥さんとすれ違いお互い会釈を交わしたが、なんでこんな時間歩いているんだろうと思ったはずだ・・・
明らかにいぶかしげに感じている顔を一瞬したように思え、
いたたまれずに自然へと歩くスピードを速め逃げるように玄関に飛び込んだ
自宅には午前中のアルバイトを終え、掃除をしている妻がいた。
「お帰りー」
「あぁ・・ただいま・・・」
「どうだった・・・職安」自然な感じで聞いてきた・・・
「いや・・あるのはあるんだけど・・・俺に会う仕事がなくってね」
「そっかー」とだけ帰ってきた。
本当は早く働けと思っているくせに・・・と思うと腹立たしい。とほぼ八つ当たり気味だ・・
「夜は今日いないの?」
「うん、アルバイト」
午前中ガソリンスタンドのアルバイト夜はスナックで働いていて、今家計を支えている状態だった。
「悪いな・・・」
「いいよ・・・でも、就職頑張ってね・・・」と言いながら掃除機を持って部屋を出て行った。