成り行き-6
「あ、ごめん……キスしたいなって思って」
亨はバツの悪そうな顔で私に謝る。
また同じ事考えてた……思わずぷっと吹き出してしまった。
「詩緒姉ちゃん?」
怒られるかも、と構えていた亨が至近距離で私の目を覗き込む。
「私達さっきから同じ事考えてる」
「え?」
「私も猫みたいって思ってた」
「……キスしたい……も?」
亨が戸惑った口調で聞く。
影になってて分かんないけど、絶対に顔が赤いハズ。
「うん」
私の返事に目の前の亨の喉が上下に動いた。
そして、そのままゆっくりと顔が降りてきて唇が重なる。
逆さまのキスなんて初めてだけど悪くない。
何度か啄むような軽いキスの後、亨が唇を離す。
「なんか照れる」
「そだね」
額を合わせて2人で笑う。
「何やってんだかな」
「ホント……お酒って怖いわぁ」
酔った事にして右手で亨の眼鏡をひょいっと取った。
「あ?」
だって、私も顔赤いもん……見られたくないし。
「馬鹿っ見えないんだって」
手を伸ばしてソファーの背もたれを乗り越えた亨は、目測を誤って思いっきり私にのし掛かる。
「んにゃっ」
「ふぎっ」
2人して妙な声をあげてソファーに倒れた。
「いったぁ〜」
「…………」
下敷きになった私はひじ掛けにぶつけた頭を擦る。