惜しげもなく揺れる乳房-4
昨夜、最後に見た鬼頭の含み笑いが脳裏を過り、美菜子は戦慄を覚える。階段を降りた鬼頭はさっさとアパートを回り込んで道に出た。美菜子が祈祷の背中を見つけた時には、鬼頭が集積場にゴミを置くところだった。
「それじゃあ・・・」
鬼頭は美菜子に手を上げると、踵を返して駅に向かう道を駆け出す。美菜子は呆気に取られて片手を小さく上げるのが精一杯だった。
「“お礼をたっぷり”とは、なんのことかのう?」
階段の影から現れた老人が美菜子に近付いてくる。老人はアパートに隣接する屋敷の主だった。
「大家さん、おはようございます」
アパートはもちろんのこと、この辺り一帯の地主だと、既に美菜子の耳にも入っている。美菜子は深く頭を下げ、顔だけ上げて好好爺に微笑み返した。
「ああ、おはよう。朝から美菜子さんの乳が拝めるとは、いい一日じゃ」
在りし日の老人はやり手だったらしく、悪びれもせず、美菜子の胸元を覗き込む。美菜子も敢えて隠すことはしない。
「朝からそんなふうに言ってもらえて、美菜子も嬉しいわ」
老人の前でぷるぷると乳房を揺すると、年老いた瞳に鋭い光が宿る。好好爺の皮を被った野獣。ゴミの収集日には必ずこの場所、この時間に現れる。
「ワシもあと十か二十、若かったら美菜子さんと乳繰り合うて、毎晩でもひぃひぃ鳴かせるんだがの」
そう言いながら持っていた杖の柄で美菜子の短いスカートを捲る。
「うふっ、大家さん、十分お若いわ・・・まだまだ、あっ・・・」
杖の柄が小さな布当てに押し付けられる。布越しの美菜子の敏感な突起を的確に捉え、ぐりぐりと弄ぶ。
「やぁぁん、だめぇ」
「まだ、いけるかのう?」
美菜子がスカートを押さえた時、屋敷の玄関が開いて女の人が出てくる。
「お義父さんっ、ごはんっ」
美菜子はちょこんと頭を下げると、すぐに階段に向かった。高校の時の日本史の先生に似た、あの女性は苦手だった。美菜子を蔑むように見る、あの目が嫌悪感を募らせる。だけど、あの老人となら一緒にお風呂に入ってあげてもいいかな。たっぷり泡を付けた乳房で、枯れ木のような身体を洗ってあげたら・・・。美菜子は、ふふっと笑って部屋に戻った。