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lost title
【サイコ その他小説】

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「あ、『観察日記』の新作でてんじゃん!いやー、近頃見てなかったからなー」

『観察日記』、暇な時によく読み返したりしてたし、新作が出るのを少しは楽しみにしていた。早速、読むことに。

内容は今までの作品よりも一層、衝撃的だった。

少年は人殺しをやめた。

何と驚き、頭を丸めて仏門に下った。
そして生きる楽しさ、素晴らしさを学んで、『観察日記』は完結した。

「はぁ?」

なんじゃこりゃ?

おいおい、おいおいおいおいおいおい、こんな終わり方、有りなんすか?

ざくり

地面を踏む音が聞こえた。

自分自身のものじゃない。

「人が来た」

ケータイを閉じる。『観察日記』のアイツはなんだかよく分からない終わり方をしたけど、まあ、それは後で考えるとしよう。

今は、狩りに集中しないと。

久しぶりの肉が食えるぞ。

獲物は近づいてきてる。

足音からすれば、あと20メートル。

まだだ。

もうちょっと近づいてからだ。

足音からすれば、あと10メートル。

「あれ?」

おかしい。

まだ自分はのこぎりを振り上げてもいない。

なのに

「血の…臭い」

おかしい。

獲物は自らの意思でこちらに歩いてきている。

もう見える範囲にいる。

もう自分が持っている、斧のようなのこぎりも見えているはずだ。

なのに、逃げようともしない。

もう見える範囲にいる。

こちらも、相手の姿は見えている。

相手は台所用の包丁を持っていて、その上、血まみれだった。

逃げろ。と本能が叫んだ。

「ねえ、君」

獲物は目の前にいる。

「こいつ、誰か…」

獲物は自分の顔を指差した。

「ああああああああああああああああああああああ!!」

のこぎりを思いっきり振り切った。

なのに、血が吹き出ていたのは、自分の胸だった。

どぶ、と口からも血が溢れてきた。

食われる、としか思えなかった。

いつの間にか倒れていて、ああ、食われちまうんだな、と覚悟をした。

でも相手は動こうとしない。それを見て、もう確実に死ぬと分かっているのに、食われることは無い、と安心した。

と同時に疑問に思った。

なぜ食おうとしないのだろう、こいつは?

もしかしたら、ベジタリアンのなのかも、などと死の淵にいる人間などには、相応しくないことを思いつき、せっかくなので、聞いてみた。

「てめえ、なにもんだ?」

と。

もちろん、口からは血が出ていたのでうまく言えてなかったのだが、相手にはどうやら無事伝わったようで、ちゃんと返事を返してくれた。

「それを知りたいんだよ」

そう言って殺人鬼は食人家の頭を渾身の力で切り裂いた。




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