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若き亀やん、再び!(シリーズ3麻雀編)
【コメディ その他小説】

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条件確認のこと -1

『麻雀をせんヤツは人生の楽しみの半分を知らんままや!』

これはオレの高校の時のツレの言葉や。素晴らしい!教養の無いそいつの言葉だけに、余分な装飾の無い生のままの表現やと思う。それ故に本質を突いとるんちゃうかな。どんな本質かと言うと、難しい表現を使うことなく『人生を楽しめ』って言うとるんや。

どんな境遇でも毎日楽しそうにしているそいつと、同じ境遇でウジウジしてるヤツと比べたら、どっちがエエか誰でも解る。人生楽しまな損や!こういう言葉こそ教科書に載せるべきなんや。

今から始まる小ズルイやつらとの麻雀も、そいつの言葉通り目一杯楽しむつもりや。特に勝負事にはそれが大事やからな。楽観せえとまで言わんけど、ある程度楽しまんとカチコチでは運も逃げるっちゅうこっちゃ!

クソが―――!楽しみやのう!ボケたヤツらを全力で叩きのめしたるでぇ―!コォ―――――!

「おっ!逃げらんと帰ってきよったがな。で、話は纏まったんかいな?」

「ええ、纏まってまっせぇ、3人ともやる気満々でんがな!」

「うほっ!エエ根性しとんなあ。エエがなエエがな♪」

社長はニタニタと気色悪い笑みを浮かべた。しかし、例の如く突然豹変し、ちっちゃい目を細めて続けた。

「しゃーけど途中でヤンピは無しや!幾ら負けが込んでもキッチリ朝の10時までやって貰うからな!」

「勿論望むところでっせ。但し、条件がありますんや」

オレが勝つのんは決まってるけど、何事も万全を尽くしとかんとな。

「なんや条件て?」

「洗牌の時に完全伏せ牌で頼んます」(注:洗牌→牌を山に並べる時に偏らない様に混ぜること。その時イカサマ防止で牌を伏せて混ぜて欲しいと言ってます)

「うほっ!麻雀小説の読み過ぎちゃうか?まあええ、西ちゃんそれでやったりや」

「ホンマ考え過ぎですわ。正直モンの私がイカサマなんてするワケないのに。まあ、納得するんやったらそれでOKでっせ」

支配人は両方の手の指でOKサインを作りながら余裕顔で言った。

どこが正直モンやねん。都合が悪なったら失神したフリするくせに。オレはOKサインをしながらでニヤつく支配人の間抜けヅラを睨みながらそう思った。

するとオレの目の端で何かが引っ掛かった。なんやこの違和感は?あれれ???

「わあ―!油断も隙もない!」

「何がや?」

「それと条件をもう一つ、その指輪も外してくださいな。さっきまで1本もしてなかったですやんか!」

こんな勝負で指輪はアカン。手クセの悪いヤツやったら『エレベーター』しよる。手の平の肉と指輪で牌を挟んで隠しよるんや。これをされたら堪らんわいな。余分に牌を1、2枚持たれたらメチャ不利やんか。(阿佐田哲也著『麻雀放浪記』より)

「何言うとんや!これはワシが西ちゃんに貸したった勝利のジンクス用のアイテムやないか」

オクレ社長の指輪かいな、そう言えばこいつっていつも趣味の悪い指輪をギラつかしとったのお。

「ジンクス?ホンダら聞きますけど、何でそのジンクスに4本も指輪が要りますんや?メッチャ不自然でっせ!どうせエレベーター用でっしゃろ!」

「あっ、ばれてた。ヒヒヒ」

「ホンマ油断も隙もない」

こんなあからさまにズルイヤツらはそうそう居らん。ホンマ、毒気に当てられて頭痛なってきたがな。

「まあ、西ちゃんやったらジンクスが無くても余裕勝ちやろ」

オクレ社長がしゃあしゃあと言った。ジンクスって言うな!正直にイカサマって言え!

条件の確認も終わった後は、皆が協力し合って手際よく準備が整った。仕事では滅多に見せない効率の良さやな。そして、任意に伏せた4枚の牌を使って親決めをした。

結果、東家で最初の親は松原、南家がオレ、西家が岸和田、北家が支配人。支配人のラス親はイヤな感じやな。親は勝ち続ければそのまま親を維持でき、上がれなかったら下家に親が回される。そして重要なのは親が勝った時の配当は子の1.5倍も貰えるということ。これはメチャメチャ美味しいので大きく勝つ場合は出来る限り親は続けなくてはならない。

親は持ち回りで東家、南家、西家、北家の順番で2巡する。一巡目が東場(トンバ)、2巡目が南場(ナンバ)。この2巡を半荘(ハンチャン)といい、半荘終了時点の持ち点で勝敗を決める。

オレらのやってるルールは最初の持ち点25000点、それが終了時には30000点を返さなければならない。30000点に不足する分をペナルティとして支払わなければならないので、差額の5000点×4人分はトップへのご褒美となる。なのでトップはメチャ美味しい。


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