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19歳
【ラブコメ 官能小説】

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回想Cパート-4

 何か、トドメを刺されたような気がした。

 もちろん、あたしが、隊長のことを好きだという気持ちの届く宛先が消えてなくなって
しまったような“喪失感”や“哀しさ”みたいなものもあったんだろうけど、それ以上に隊長
の抱えてた事情を何にも知らなかった、自分に対する“後悔”とか、あまりにも、無邪気で
能天気だった自分への“嫌悪感”なんかが、頭の中で渦を巻いてたような気がする。

 あの晩は、話が終わった後「いろいろ、考えてみるね」なんて明るく言いながら別れた
けど、今日、コンビニの前ですれ違うまで、ずっと隊長と顔を合わせることができなかっ
たんだから、やっぱり、あたしにとっては大きな出来事だったんだな、と思う。

 翌日は大学の入学式で、一応、そのために新調したスーツを着て、学長のあいさつとか
この先の予定とか、講義の案内とか、色々と話を聞いてたような気はするんだけど、右の
耳から左の耳へ全部通り抜けて行ったので、内容なんて欠片も憶えてない。

 最初は、ちゃんと授業にも出てたんだけど、ちっとも集中できなくて、その内、適当に
要領をかましてサボったりするようにもなったきた。ひとりで思い悩んでいても、少しも
埒があかない。このままではイカンと思っていたら、蝶々さんから、隊長のことについて
話したいから会えないか? と連絡があった。あたしは、即オッケーして、街中の、フロ
アが広いファミリーレストランで待ち合わせた。

 ふたりだけで話すのは初めてだったけど、少しもそんな感じはしなかった。

「そうだよなぁ、悔しいけど、アイツ、かっこいいもんなぁ…」

 蝶々さんは、あくまで、“軽いノリ”で話につき合ってくれたので、精神的に弱っていた
あたしとしては、随分と助かった。こういうところは、ホント大人だなぁ、と思う。

「実はさ、ユイちゃんには悪いけど、あたしも、ちょっとだけアイツに憧れてたことある
んだよね。すぐに今の彼氏とつき合うことになったからさ、好きになるところまで行かな
かったけど。そしたら、しばらくして、アイツが、カミングアウトってやり出して…」

 そんな風に茶化して言っちゃっていいのかな? なんて思ったけど、そこはソレ、何年
も同じグループで活動してて気心の知れた者同士の“間合い”ってヤツなのかもしれない。
何だか、すごく悔しいような羨ましいような、複雑な感じがした。

「そんときはさ、あたしも正直ショックだったわよね。それまでちっとも知らなかったわ
けじゃない? アイツが自分のことで色々悩んでるってこと。ま、あんなマッドトーキー
に悩みがあるなんてさ、絶対、思いもよらないよね? ははははは」

 やっぱり、あたしが隊長のことを好きだってことは、蝶々さんには“モロわかり”だった
らしい。しばらく、あたしの様子を見てて、このままどんどん好きになっちゃったら事実
を知ったときに傷が深くなるだけだから、なるべく早めに話をした方が、いいんじゃない
かって蝶々さんが隊長に言って、あの晩の“告白”になったようだ。


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