夫は多忙-2
鬼頭はあっさりそう言って、美菜子が受け取ろうとするまで差し出した箱の角で美菜子の乳頭を軽く小突く。
「あっ、あっ、あ・・・ありがとう、ございます・・・」
わざとなのか、偶然なのか分からないのは鬼頭が無表情だったからだ。
「も、もし、よろしかったら・・・シチュー、お持ちになりませんか・・・」
美菜子はようやく箱を受け取り、俯き加減でそれだけ呟いたが、鬼頭は“それはありがたいです”とすぐに返答をした。
「ちょっと待ってくださいね」
美菜子はすぐに器を取りに行き、鍋の蓋を開けた。少し煮込み過ぎな気もするが、それより裸の背中や尻を這い回る鬼頭の視線が気になる。内腿がぬるぬるしている。そこにも鬼頭の視線を感じる。テーブルに置いた器にラップを掛けようとして美菜子は前屈みになった。わざとではないが、鬼頭に尻を向けていただけに、閉じ合わせた太腿の奥が・・・。
「わ、私、美菜子って言います・・・」
美菜子は俯いたまま盆に載せた器を差し出す。
「美菜子、さんですか。ああ、ありがとうございます。あったかそう・・・美菜子さんの、白いシチュー、いただきます」
鬼頭は器の中を眺めてから再び美菜子に目を向けると、乳房から下腹部へと視線を走らせる。
「こぼさないように一滴残らず、舐め尽くすように美味しくいただきますよ。皿はきれいにしてから返しますから」
鬼頭は舌舐めずりをしながらねっとりと呟き、肌をピンク色に染めようとしていた美菜子の前で玄関ドアを静かに閉めた。
「はぁぁ・・・」
美菜子は隣のドアの閉まる音を聞きながら、テーブルに寄り掛かった。内股を濡らす生暖かいものが膝の辺りまで流れてくる。
「あぁ、鬼頭さん・・・ここも舐めて・・・」
美菜子はテーブルに手を着いて、玄関に向けて突き出した尻を振る。その時、重い足音が外廊下を近付いてくるのが聞こえてきた。
―ガチャッ!
「あ、あなたっ!おかえりなさぁい」
美菜子はエプロンをさっと直して、玄関に北風と共に入ってきた夫を迎え入れた。
「ああ、ただいま・・・」
崇男はテーブルを眺めながら靴を脱ぎ、“めし”と呟いてネクタイを緩めて椅子に座ると取り出した携帯を弄り始める。目の前に出されたシチューに口を付けると、“風呂”と呟いた。