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上り詰めていく羽衣の表情に、ついこのまま突っ走りそうになったが、広瀬の存在が俺を越えてはいけない境界線の所で踏みとどまらせてくれた。
秘所からいきなり引っ込めた手に、驚いた顔をこちらに向ける羽衣。
息を切らしながらも呆然としたその顔は、何で途中で止めちゃうの? とでも言いたげだった。
仕方ねえだろ、これ以上は俺の方が持たないんだから。
俺はそんな羽衣の視線に気付かない振りをして、ジーンズのポケットから携帯を取り出した。
そして、発信履歴の一番最初にある名前を表示させると、
「あー、なんかムラムラしてきたから、俺、帰って彼女とヤってくるわ。つーわけだから、羽衣。お前しっかり広瀬をレクチャーしてやれよ。じゃあお先〜」
と、わざとらしい笑顔で残された二人に手を上げると、携帯を耳にあてながら部屋をあとにした。
俺のジーンズはもうはちきれんばかりにテントが張っている。
あのまま3Pでも……、という邪な考えがよぎったけれど、純情な広瀬には刺激が強過ぎだろうし、何より惚れた女は独り占めしたいはずだ。
玄関のドアをバタンと閉めて、俺はただ一言、
「あー、俺ってホントいい奴だな」
と、ひとりごちてからクックックッと笑い出した。