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詩<うた>を聴かせて
【アイドル/芸能人 官能小説】

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詩<うた>を聴かせて-2

「…そんな熱っぽい視線で見つめられたら眠れないよ、柚チャン」
突然光貴がパチッと目を開けて柚葉に微笑みかけた。
「光貴…!ごめん、起こしちゃった?」
「ううん、俺こそ迷惑掛けちゃってゴメン。そんな淋しそうなカオしてどうしたんだよ」
光貴も同じように柚葉の頬を両手で包んで額をこつんとぶつけた。
二人の距離がいきなり近くなって柚葉の顔が朱色に染まる。
「ううん、なんでもないの。もう、こんなになるまでお酒飲んじゃダメだよ?」
「…今後気を付けマス」
決まり悪そうに光貴はそう言う。
「あ、じゃあ私帰るから…」
ずっと傍に居たい気持ちを抑えて、そう答えた。
そして立ち上がろうとした柚葉を光貴は自分の所へ引き寄せ、口付けをする。
バランスを崩して思いっきりベッドに倒れ込んでしまった。
「きゃっ…!ちょっ…離して」
「柚…今日泊まってけよ」
切なそうに耳元で囁かれ、それだけで体がピクンと反応してしまう。
歌っている時もたまに抱かれているような感覚に陥ってしまう
セクシーな光貴の声に体全体が包まれて胸が疼いた。
「離して…早くしないと終電なくなっちゃうよ…」
「だから今日泊まってけばいいじゃん」
「明日学校あるし…!光貴だってライブじゃない!」
「俺は平気だよ。明日送ってくから…ダメ?」
優しく髪を撫でながら光貴の瞳が真っ直ぐ柚葉を見据える。
それは話す時の光貴のクセ。
瞳から逃れられなくなる…。
「とにかくダメなのっ!!」
何とか光貴を振り切って柚葉は部屋を出た。
「柚…」
一人残された部屋で光貴は深く溜め息をつく。
柚葉のよそよそしい態度に彼も気付きつつあった。


―――翌日のライブに柚葉は行かなかった。
昨日、光貴のことを拒絶した後で会うのが恐かった。
それにまたあんな風に求められると自分の決心がきっと揺らいでしまうと思った。
…次に会うのが最後…。そう心に誓った。


翌日のライブからずっと姿を見せない柚葉を光貴も気にしていた。
もうかれこれお互い合わない日が一ヶ月も続いている。
ライブ中もずっと気になっていて、ここ数回のライブで歌詞を間違えたり、MCでは上の空だったりと空回りの連続だった。
「コウキ、どうしたんだよ。調子悪いのか?」
バンドのメンバーの声すら今の光貴には煩わしく感じる。
「そんなことないよ。…気にすんな」
「そういえば柚ちゃん最近全然見にこねぇよな。どうかしたのか?」
「そんなの…俺が聞きたいよ…」
(…これくらいで左右されてちゃプロ失格だよな…)
そう自分に言い聞かせないとどうにかなってしまいそうだった。
「おい…コウキ?!」
そのまま光貴の意識は遠のいていった。


―――「んん…?」
気が付くと光貴は自分のベッドに横たわっていた。
「あ、気が付いた?」
「柚…俺…」
「熱があって倒れちゃったんだよ。もうだいぶ下がったみたいだけど。お腹空いた?何か食べたいのある?」
久しぶりに見る柚葉の顔…それだけで光貴の心が癒される。
そして自分の居場所がわかった瞬間心が緩んで、光貴は思わず本音を漏らしてしまった。
「何も要らない…それより…柚が欲しい…」
その熱っぽい視線に柚葉は胸が高鳴るのを感じた。
…決心が鈍りそうになる。
メンバーの人から倒れたと連絡があったとき、これで最後だと自分は決心したはずだ。
必死に平静を装っていたのに…。
「ダメだよ…病人なのに…それに私…」
柚葉は思いつめた顔で光貴を見つめる。
そして、意を決したように口を開いた。
「…私たち、別れよう」
突然の柚葉の告白に、光貴の思考が一瞬停止する。
「…え…何でだよ?」
柚葉は光貴と目を合わせようとしない。
光貴の瞳に捕まってしまうのが恐かった。
「私と光貴じゃ釣り合わないよ…」
柚葉は伏し目がちに淡々と話す。
「釣り合わないってなんだよ…俺は嫌だ…」
「もう光貴と一緒にいることが辛いの!」
柚葉は瞳に涙をいっぱい溜めて半ば叫ぶように答えた。
そんな柚葉の様子を見て、光貴は何も言えなくなってしまった。
自分がそこまで柚葉を追い詰めてしまったのだろうか…。
それに気付かなったんなら彼氏失格だ。
ただ一つわかることは、もうこれ以上柚葉の涙は見たくなかった。
「わかった…。でも最後に…柚を感じたい…」


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