春菜と健太郎-2
「えっ?!でも、」春菜が口を押さえた。「ミカさんって、龍くんのお母さんだよね?」
「そうだけど。」龍が涼しい顔で言った。
「ど、どういう気持ち?」
「何が?」
「だ、だって、自分の母親が、あなたにとって兄弟同然のいとことセックスしたんでしょ?龍くんの方がショックだったんじゃないの?」
「あんまりショックじゃなかったなー。だって、二人とも俺ちっちゃい頃からよく知ってるし、」
「当たり前だ。特にミカさんはお前を産んだ人なんだからな。」
「二人ともそのことで俺に対する態度が変わったりしないし。」
「そんなものなんだ・・・。」
健太郎が言った。「それに、そのことを知った時、龍はマユに目がくらんでたからなー。母親が俺に抱かれたことなんて、どうでも良かったんじゃね?」
「くらんでたの?龍。」真雪が訊いた。
「はい。仰る通り。あの時は既にもう貴女しか見えてませんでした。」龍は真雪の手を取って笑った。
「ごちそうさま。」春菜も笑った。
「そう言う龍もさ、」真雪だった。「ママを抱いてみたい、なんて思ったことないの?」
「マユミ叔母さんを?」
「そう。」
「うーん・・・。」
「お、考えてっぞ。」話題が自分から遠ざかった健太郎が、安心して楽しげに言った。
「あるとすれば、真雪に似てるからふらふらと、っていうシチュエーションかな。」
「だけど、龍ったら、ママを思いっきりイかせてたんでしょ?」
「いや、だからそれはケン兄の夢の中の俺でしょ?」
「春菜も激しく昇天させてたみたいだし。ケン兄を縛り上げてさ。」
「俺、迷惑だよ。」龍がまたアーモンドをつまみながら言った。「その俺って、超性格ワルだよ。」
「龍ってテクニシャンなんだねー。」真雪は笑った。
「でも、」龍が真雪を睨んで言った。「真雪、俺よりケン兄のキスの方がいい、って言ったんだって?」
「なに怒ってるんだよ。変なの。」真雪もカップを手に取った。
龍は健太郎に向き直った。「ケン兄、真雪がそう言ったんだよね?」
「確かに言ったなー。」健太郎は面白そうに言った。「でもお前、ルナに『龍くんの方が感じる』って言わせたんだぞ。おあいこじゃないか。」
「そ・・・。」龍は言葉を詰まらせた。
「二人ともなに夢の中の話を本気にしてるんだよ。」真雪が言った。「それともなに?現実に春菜のこと、気にしてるの?龍。」
「ああ、気にしてるよ。」龍はあっさりと言った。
「えっ?!」健太郎が眉間に皺(しわ)を寄せた。
「被写体として、とっても魅力的だ。」
「え?どんな風に?」
「気を悪くしないでね。春菜さんはピンクがよく似合うから、その名前通り春に『シンチョコ』をバックに撮ってみたい。ピンク系の服、着てもらって。」
「なるほど。」健太郎はとりあえずほっとして肩の力を抜いた。
「別にメイド服でなくてもいいからね。」龍は笑った。
「メイド服もまんざらでもないんだってさ、ルナは。」
「へえ、ホントに?」真雪が言った。「いつか実現させようか。」
「うん。」春菜がこくんとうなずいた。
「萌えてきたっ!」真雪が力強く言った。
「真雪はオタクだからなー。」龍がまたアーモンドに手を伸ばした。「ケン兄も食べたら?安眠できるよ。アーモンド。」
「俺、もう眠るのが怖い。」
「じゃあ起きてたら?春菜と一緒に。いろいろやることあるでしょ。」真雪が言った。
「ばかっ!」例によって健太郎はひどく赤面した。