契〜あの日の約束〜-6
時折洩れる声が千里のヤル気を沸き立てる。
「気持ちイイ?」
「んんッはッ…もッダメッ…!!!」
杏里はイッた。体がビクビクッと痙攣する。
「ッはぁッ…ん!!?」
快感の余韻に浸っていた杏里は、千里の指によってさえぎられた。
「くッ…あッ」
―グチュ
千里の指は杏里の陰部に深く飲み込まれている。
「そんなッ…いきなりッ」
「痛い?」
少しずつ指をスライドさせながら、千里は尋ねた。
「う…うん、痛くないよ…。」
イッたばかりの陰部は熱を持ち、千里の指も容易く受け入れる。
「あッ…やんッ…」
千里が指を動かす度に、杏里の愛液は溢れだした。
「もう…大丈夫かな?」
千里は自分の物を取り出す。
「うん…アソコがムズムズするの…」
「わかった…。」
千里はゴムを着用して、杏里の上にまたがった。
「じゃ…入れるよ。」
杏里の太ももを出来るだけ開いて、千里自身を陰部にあてがう。
(千里と…一つになる)
杏里は目を閉じた。
「んっ…」
―…
『杏里ちゃん、大きくなったら結婚しよう。』
『僕、杏里ちゃんの事大好き。』
『杏里、俺100点取ったよ♪』
『杏里…何か小さくなったな。』
『杏里…』
千里が私を呼ぶ。小さい頃の私より高い声で。声がわりした大人の声で。
いつかあたしの中で鳴かせたいって思ってた。
いつの間にか抜かされた身長。私より細かった体。たくましく成長した男の体に抱かれたいって、どれだけ想像したか…。
いけない事だって、知ってる。でも、気持ちが止まらない…。
ゴメンね、千里。貴方の全てが欲しい…。
―…
「あッ千里ッ…やんッ」
「はッ…杏里ッきついよッ…」
肉と肉がぶつかる音。汗ばむ体。声を殺して呼ぶ互いの名。
(気持ちイイんだけどッ…)
杏里はアソコが溶けそうになる程感じている。薄く目を開けると、荒く息をして快感に目を閉じている千里がいた。
(私の中にいるんだ…。私の中で感じてくれてるんだ…)
嬉しすぎて、また目がうるんだ。
「千里…」
杏里がぼそっと呼んだ名前を、千里は聞きのがさなかった。
「ん?ど…したッ?」
杏里は横に首を振った。
「何でもないよ…。すごく気持ちよくて…幸せすぎて…もう…」
(私、十分だよ…)
今こうやって抱き合っても、明日にはまた兄弟に戻らなければならない。
いけないとわかって犯した禁忌。
抱かれる事を望んだ事実。
なのに…どうしてこんなに胸が苦しいの?
「千里ッ…千里…」
あなたの印を身体中に残して…消えないように、強く、強く…。
そしたら、また明日から頑張れる。
「くッ…」
激しく、熱く、もっともっと…
「あッやッイッちゃッうッ」
奥までついて…。意識がなくなるくらい。
「杏里ッ…一緒にッ」
もっと激しく…もっともっと…忘れられないくらい激しく抱き締めて。
「うッ千ッ…あぁぁ〜ッ」
「杏里ッ…」
―ドクンッ
―…
「…。」
綺麗な寝顔の千里にそっとキスをして、杏里はベランダに出た。
夜空には満月が輝いていて、月の光が杏里を照らす。
「…ッ」
全てを月が見ていた。
「神様ッ…私は…それでも幸せでした…」
とめどなく溢れる涙で、前が見えない。
「…神様ッ…」
私は悪い事をしたのですか?
「…。」
ベッドの中ですやすやと寝息をたてている千里を見て、微笑ましく思うのと同時に、朝がこなければいいのにと思った。
それでも朝は必ずくる。
「…千里…」
交した約束は叶えられない。
それでもいいんだ。千里と私は心の奥で繋がっているから。
約束よりも強い、絆という鎖で…。
そっとベッドに戻って、千里の腕枕に寄り添った。
これから始まる新しい関係に期待し不安し、目を閉じた。
夜があけるまでには自分の部屋に戻らなければ…。
神様、もう少し…。もう少しだけ、彼の温もりを感じさせてください…。
《完》