第4話-12
弓なりに背中を反らせて、胸が大きく弾み、そのままぐったりと脱力する。自分の体がどうなったのか全くわからず、ぼんやりと虚ろな瞳で天井を見つめていた。
英里が達した後、圭輔はそこから口を離すと、また彼女の目の淵に溜まった涙を指で拭う。
「ごめん、嫌だった…?」
優しく、彼女の髪に触れながら問いかける。
ようやく痙攣が治まった英里は、儚げな微笑を浮かべる。
「いえ、ちょっと、びっくりしただけです…。圭輔さんが、したいように抱いて欲しい…私の全部をあげたいから…」
そう言いながら、英里の顔はだんだん俯き加減になる。
自分で言った台詞だが、すごく恥ずかしくてたまらない。
(あぁ、もう、何言ってるんだろう、私ったら…)
圭輔は耳まで顔を真っ赤にしている英里の頬に触れて、顔を上げさせる。
「…英里って可愛いよなぁ…」
「別に、可愛くなんて…」
照れた顔を無理矢理晒されて、英里は少し拗ねた気分で圭輔の顔を見ると、すごく優しい表情で見つめられていて、その瞳に一気に吸い込まれてしまいそうになる。
もう他のことなんでどうでも良くなって、彼に全てを委ねたくなる…。
「…圭輔さんはずるい…」
「え、何が?」
「…独り言です」
「教えてよ」
「…いやです」
恥ずかしそうに、顔を背ける彼女を見ていると、そんなところがまた可愛くてたまらない。
「さっき、もっと素直になるって言った…」
「でも、面白くないからそのままでいいって言いました」
…確かに、言った。
少し根に持っていたのか、圭輔を見つめる英里の瞳は、「それは嘘だったのか」と語っている。
それ以上言い返せず、圭輔も拗ねたような表情を見せて口を噤む。
そんな彼の様子に、英里の口元から自然に笑みが零れる。
さっきまでの、熱っぽい瞳で自分を虜にする彼にも惹かれるが、こんな彼も可愛くて愛おしい。
「だって、私ばっかりどきどきさせられて…ずるい…」
英里は素直にそう告げると、
「そんな事ないって」
圭輔は英里の体を自分の方に引き寄せる。
胸に顔を寄せると、彼の心臓がすごい速さで脈打っていた。
「俺も、こんなに緊張してる…」
英里を抱く時はまるで自分が初体験であるかのように、彼女を一心不乱に求めてしまいそうになる。
それ程魅力的で、自分を抑制しきれない。
今も、自分の腕の中にいる華奢な彼女の体を押し倒してしまいたくて堪らない気分だ。
髪に触れながら、その衝動をもう少しだけ抑え込む。
そんな圭輔の葛藤を知ってか知らずか、英里は目を瞑って、彼が奏でる心地良い心音に耳を傾ける。
「私…これからもずっと圭輔さんの隣にいてもいいんですか?嫌な態度取って、困らせてばっかりかもしれない…」
「当たり前だろ。英里の事全部受け止められる男なんて、きっと俺しかいない。それに、そんな風に思える相手も俺には英里しかいないから」
「…すごい自信」
「違う?」
圭輔はそう言いながら、悪戯っぽい微笑みを湛えて、英里の顔を覗きこむ。
周囲の人には勿論、親にさえ見せた事がない、こんな醜い自分を見せたのは、彼が初めてだ。
その上で、受け止めてくれるというのならば…
英里は落ち着くかのように、軽く息を吐く。
「違…わない…」
「だから英里も自信持てよ。俺に愛されてるって」
圭輔は自分に優しすぎるくらい優しい。それに、もっと甘えていいんだろうか。
「…私も、自分が抑えられなくなる位好きなのは、圭輔さんだけ。他の人じゃだめみたいだから…」
英里は顔を上げて、圭輔の頬に触れると、目を瞑って口付けを求める。
それに応えて彼は優しく唇に触れ、彼女の体を抱き締める。
以前は服を着たままだったので、こうやって直に素肌が触れ合うのは本当に久しぶりだ。
圭輔は彼女の肌理の細かい、柔らかな体を抱き締めながら、温もりに心地良さを感じる。
互いの熱を感じることがこんなに安らげるものだなんて、英里は知らなかった。
それを教えてくれたのも、圭輔だ。逞しい彼の腕に抱かれて、彼女もまた幸福感に包まれる。
唇を離して、圭輔はゆっくりと英里の体を布団の上に押し倒す。
こうやって彼女の長い黒髪が布団の上に広がる様は、見惚れる位美しい。
圭輔は英里の両足を大きく広げて自分の肩に担ぎ、秘裂にすっかり怒張した肉棒を擦り付ける。
話しすぎてしまったが、彼女の秘所は圭輔を十分受け入れられる程潤んだままだ。
今にも破裂そうなほど屹立した肉棒を膣口に宛がい、柔らかい媚肉を押し広げながらぐっと押し込むと、そこは彼を何の抵抗もなく受け入れる。
「あぁ…っ」
自分の芯を貫く熱い感触に、英里は悩ましげに身を捩る。
四肢の感覚を一気に奪われるかのような甘美な刺激。
三度目で、彼女の体もだいぶ彼に慣れたようだ。
痛みはなく、ただ快感が下半身から波紋のように広がる。
熱くて堅い彼のものが英里の中を行き来する。
「ん…」
英里は彼のものを求めるかのように、少しだけ物足りないような声を上げる。
最初は、ゆっくりとした抽送で、彼女の中をじっくりと感じるかのように、圭輔は腰を動かす。
柔肉が彼を締め付け、襞が絡まり、一突きする度に、彼の口から色っぽい喘ぎ声が漏れる。
心地良い彼女の中で、すぐにでも自分を解放してしまいたくなる。
「英里…」
吐息混じりに愛しく彼女の名を呼び、額に軽く口付ける。
その声を聞いただけで、英里の心臓は苦しいほど脈打つ。
さらに、両手で胸を揉みしだきながら、彼の肉棒は入り口の浅い部分を何度も優しく刺激する。
出し入れする度に、結合部から愛液が零れ落ち、後ろの蕾の辺りをも濡らしている。
愛液を指に絡めて、圭輔がその周辺に愛液を塗りたくるかのように刺激した瞬間、英里の心臓が大きく跳ね上がる。
この体勢だと、彼にそんな部分まで見られてしまう。
それに、そこを触られているのが恥ずかしくて、英里は思わず目を瞑った。